米ウォルマート、通年の利益見通しを下方修正、食品や燃料の高騰が影響

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月03日

米国小売り大手ウォルマートは725日、2022年第2四半期(57月期)と2023年度1通期までの業績予想を下方修正すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、調整後の1株当たりの利益はそれぞれ89%、1113%減少するとした。従来の見通しでは、第2四半期は横ばいから小幅増、通期では約1%の減少を見込んでいた。高インフレによる食品や燃料の高騰により、消費者の間で一般商品への支出を買い控える動きが広がっていることが要因として挙げられた。

同社の発表によると、食品価格は足元で2桁台、上昇しており、必需品以外の商品カテゴリーに対する消費者の購買意欲に影響を与えているとした。特に衣料品などを中心とした在庫を解消するために、より多くの商品を大幅に値引きせざるを得ない状況と説明した。同社のダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は「食品や燃料のインフレ率が上昇していることで、消費行動に影響を及ぼしている」とし、「今年下半期は一般商品への圧力が一段と強くなる」との予想を示した。同社は在庫を削減するために、サプライチェーンにかかる一定のコストとインフレを反映した価格管理と輸送コンテナの積み残しに関連する保管コストの削減を進めることで対応を図っているとした。

他の大手小売り各社も在庫水準の積み増しなどが重荷となっており、大手ターゲットも過剰在庫の解消に向けてより大幅な割り引きを行い、これまでに四半期利益率の見通しを2度にわたって下方修正している。バンク・オブ・アメリカによると、5月の小売店の在庫は7,050億ドルに増加して過去最高額を記録しており、新型コロナウイルスのパンデミック前の予測と比べても、わずか3%だけ減少している。同社アナリストの分析では、小売業者は個人消費の需要の回復が続くと予想し、家庭用品や電化製品などの商品を確保するために大量に仕入れたが、2022年に入って需要が物品からサービス支出へとシフトし、高インフレも一部の消費を遠ざけていると指摘。また、サプライチェーン混乱で需要と供給の不一致が生じており、店舗側は商品を売りさばくために大幅な値引きを余儀なくされているとしている

ウォルマートの発表を受けて、英国調査会社グローバルデータ・リテールのマネジングディレクターのニール・サンダース氏は「ウォルマートは、小売業界全体にとって重要な役割を担っている」「第2四半期と通期の見通しを引き下げたことは懸念材料で、全ての小売業者が現在受けている圧力を浮き彫りにしている」と警告した。同社を含む小売り各社は8月に決算報告を予定しており、その報告内容に注目が集まる。

(樫葉さくら)

(米国)

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