スリランカにスタグフレーションの懸念

(スリランカ)

アジア大洋州課

2022年08月16日

スリランカ中央銀行は815日、7月の購買担当者景気指数(PMI)(注)を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同月の製造業PMI41.4と前月比で2.7ポイント低下し、サービス業PMI43.02.7ポイント上昇した。製造業のPMIは、特に生産の指数が32.0と低かった。需要低迷や原材料・燃料不足から飲食料品セクター中心に落ち込んだ。前月比では上昇したサービス業も、景気の判断の分かれ目となる50を下回っている。企業の購買担当者の景況感は、景気が厳しい状況にあることを示している。

家計の購買力・消費にも強い逆風が吹いている。スリランカ中央銀行が729日に発表した首都コロンボの7月の消費者物価指数上昇率(インフレ率)は前年同月比60.8%となった。特に、143.6%の「輸送」、90.9%の「食料品」、87.8%の「外食・ホテル」が全体を押し上げた。202112月以降、インフレ率は2桁が定着し、伸び率も拡大が続いている。1年前と比較すると、物価指数は1.6倍となっている。燃料確保の難しさや物流逼迫などで企業活動が制限される中、供給量が減少した結果、物価は上がり続けている。

景気後退と同時に、物価が上昇する状態はスタグフレーションだ。世界経済の悪化や食料・燃料の不足がインフレ率を引き上げる一方、政策金利の上昇が投資を減少させ、政情不安や必需品の不足が生産量の減少を招くことで、スリランカ経済はスタグフレーションの状態に近づきつつあるとする論調もある(「デイリーミラー」紙811日)。同紙は、解決策として、経済的弱者へのピンポイントかつ時限的な支援を行いつつ、金融引き締めの継続や緊縮財政によって、インフレ期待の固定化を図ることが必要とする。

(注)Purchasing Managers' Index:購買担当者景気指数の略。購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエートを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

(新田浩之)

(スリランカ)

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