中国の国有企業5社、米証券取引所からの上場廃止発表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年08月18日

中国国有企業の中国アルミニウム(チャルコ)と中国人寿保険、中国石油化工(シノペック)、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国石化上海石油化工の5社は812日、米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)からの自主的な上場廃止を申請するとそれぞれ発表した。5社はNYSEに上場している米国預託株式(ADS)を廃止する。

5社については、米国で2020年に成立した「外国企業説明責任法(HFCAA)」に基づいて米国証券取引委員会(SEC)が「委員会指定企業」に指定している。委員会指定企業は、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が監査報告書を完全に審査できない企業が指定される(2021年12月8日記事参照)。委員会指定企業に指定された企業は毎年、外国政府機関による株式保有率などをSECに報告することが義務付けられる。委員会指定企業に3年連続で指定された企業の証券は米国の取引所での取引が禁止される。委員会指定企業は816日現時点で中国企業を中心に155社に上る(注)。

5社は発表でHFCCAには言及していない。ただ、各社は上場廃止の決定の理由として、上場維持にかかる行政手続き上の負担などを挙げている。米国では、2001年に発覚した米企業エンロンの不正会計事件などを契機に成立した「サーベインス・オクスレー法(SOX法)」の下、上場企業は監査についてPCAOBの審査を毎年受ける義務がある。SECは、中国と香港がPCAOBの審査に協力していないことを問題視している。米中の当局はPCAOBによる中国企業の監査情報へのアクセスについて協議しているが、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は7月の記者会見で「(合意に至れない)リスクはある」と発言し、米中の合意に懐疑的な見方を示した(ブルームバーグ713日)。

(注)委員会指定企業への指定が確定した企業数。委員会指定企業への指定は2段階に分かれている。SECはまず暫定的な指定を行い、企業はそれに対して15営業日以内に不服を申し立てることができる。企業が申し立てしない、または申し立てが却下された場合に指定が確定する(2022年5月9日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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