米クルーズ船業界、新型コロナ関連プロトコル緩和の動き相次ぐ

(米国)

アトランタ発

2022年08月15日

米国フロリダ州のクルーズ船運航大手ノルウェージャン・クルーズライン・ホールディングス(NCLH)は88日、同社の新型コロナウイルス感染防止プロトコルを改定し、ワクチン完全接種済みの乗客(12歳以上)は乗船前検査や陰性証明の提出は不要と発表した。また、これまで乗船を認めていなかったワクチン未接種者(12歳以上)についても、72時間以内に医療機関でPCR検査または抗原検査を受けて陰性ならば乗船できるようになる(注1)。同社の3つのブランド(ノルウェージャン・クルーズライン、オセアニア・クルーズ、リージェント・セブンシーズ・クルーズ)で93日から適用する(注2)。

米国のクルーズ船は最も早い段階からパンデミックの影響を受けた業界の1つだ。20203月中旬に米国疾病予防管理センター(CDC)が米国内での運航停止命令を発出(2020年4月21日記事参照)。同命令は2回の延長を経て202010月末で終了したものの、運航再開にはCDCが定めた条件付き航海命令(CSO)に従う必要があり、各社にとって高いハードルとなっていた。202011月下旬にCDCがクルーズ船旅行の警告を最高レベルの4に引き上げたことも重なり、再開が実現したのは運航停止から15カ月以上経った20216月だった(2021年6月18日記事参照)。

逆風の続いたクルーズ船業界だが、ここ約半年間でCDCによる規制が次々と解除され、取り巻く環境に変化が生じている。CDC20222月にクルーズ船旅行の警告をレベル3に引き下げ(注3)、315日にレベル2に、同月30日には警告自体を解除した。また、718日には、CDCがクルーズ船運航会社に課していた新型コロナ関連の規制を撤廃し、客船ごとの感染者数の割合を4段階(緑、黄、オレンジ、赤)に色分けし公開していたサイトも終了した。

こうした流れを受け、主要なクルーズ船運航会社で新型コロナウイルス関連プロトコルを緩和する動きがみられる。カーニバル・クルーズラインは84日から、ロイヤル・カリビアン・グループとMSCクルーズは88日から、5泊以下のショートクルーズ限定で、ワクチン接種完了者の乗船前検査を不要にした。今回のNCLHの発表はさらに一歩推し進めたかたちで、ワクチン接種完了者の事前検査を不要とするクルーズの泊数に上限を設けていない。NCLH社長兼最高経営責任者(CEO)のフランク・デル・リオ氏は「見直しが待ち望まれていた検査とワクチン接種要件を改定することで、ウィズコロナの生活を学んだ社会に合わせることができ、乗船客が当社の3ブランドのクルーズをよりシンプルで簡単に楽しめるようになる」と需要回復に期待を寄せる。

(注111歳以下の乗客については、これまでも一定条件下で乗船が認められていた。93日以降は、ワクチン接種も乗船前検査の実施も求められない。

(注2)出発元や訪問先都市の規制次第では、この緩和規制が適用されない場合もある。なお、NCLHはワクチン完全接種と事前検査を強く推奨している。

(注3CDC20216月にクルーズ船旅行の警告レベルを3に引き下げたが、オミクロン株の感染拡大を受け、202112月にレベル4に再度引き上げた。

(高橋卓也)

(米国)

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