米ボーイング、経済産業省と協力強化で合意、名古屋市に研究開発拠点設立を発表

(米国、日本)

米州課

2022年08月02日

米国航空大手ボーイングは、持続可能な航空燃料(SAF、注1)などサステナビリティー分野での技術協力や、電動航空機および水素航空機など次世代航空機の実現に向け、経済産業省と協力強化で合意し、また、愛知県名古屋市に研究開発拠点を設立すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

萩生田光一経済産業相と同社チーフエンジニアのグレッグ・ハイスロップ氏は81日、東京都内で協力強化の合意書〔PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)日(仮訳)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕に署名した。経済産業省とボーイングは、20191月に技術協力強化に向けた合意を結んでおり、今回の署名はこの合意を延長・拡大するかたち。今回合意書では、(1)経済産業省とボーイングは、SAFを含むサステナビリティー分野での協力を強化し、航空機の電動化技術や水素関連技術などの技術分野での協力を一層推進する。また、次世代の航空機の技術的な実現可能性や市場へのインパクトなどの研究において協力する、(2)経済産業省は、次世代の航空機の実現に向けた研究開発、市場調査、技術実証など、必要な支援に努める、(3)ボーイングは、名古屋市に新設する研究開発拠点「ボーイング・リサーチ・アンド・テクノロジー(BRT)」を活用し、技術の実用化を目指すとしている。

同社のハイスロップ氏はBRTについて、「最新のグローバル研究開発センターを日本に開設することができ、大変うれしく思う」「新たな研究開発センターではボーイングのSAFや航空機電動化など構想を発展させるとともに、将来の製品と生産システムにおける高い持続可能性の実現に向け、デジタル化・自動化・高性能航空宇宙用複合材の組み合わせを探る」とその役割を説明している。

ジェット燃料による温室効果ガス(GHG)の排出を低減するため、世界の航空会社などが加盟する国際航空運送協会(IATA)は2021104日に開催した年次総会で、2050年までに航空業界から二酸化炭素(CO2)排出量をネットゼロにする目標を発表した。米連邦航空局(FAA)も航空部門の2050年ネットゼロに向け、全ての航空燃料をSAFにする目標(2021年11月16日記事2021年9月13日記事参照)を発表するなど、航空業界ではSAFをめぐる取り組みが加速化する。

ボーイングは同日、日本で生産されるSAFの事業化、普及、利用拡大を図る団体「ACT FOR SKY」(注2)への参加を併せて発表した。同社チーフサステナビリティーオフィサー(CSO)のクリス・レイモンド氏は「ACT FOR SKYに参加し、他のメンバー企業と協力して、グローバルなベストプラクティスを共有し、日本におけるSAFの事業化を支援できることを光栄に思う」と述べた。また、ACT FOR SKYは「ボーイングの参加を歓迎する。ボーイングが他のメンバー企業とともに、日本におけるSAFの事業化、普及、拡大に向け、ACTに協力してくれることを期待している」と述べている。

なお、同社は719日にも、三菱重工業との間でSAFを含む持続可能な航空産業の実現に向けた協業を行う覚書(MOU)を締結している(2022年7月21日記事参照)。

(注1Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとされるが、価格差も現時点では最大で10倍程度あるとされる。

(注2)全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、日揮ホールディングス、レボインターナショナルが202232日に設立。202281日時点で16社が参加。

(葛西泰介)

(米国、日本)

ビジネス短信 0d20eb65329bbbbe