米中、米国で上場する中国企業の監査をめぐり合意

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年08月29日

米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)は8月26日、中国証券監督管理委員会および中国財政部と、米国の証券取引所に上場する中国企業の監査情報の検査に関する協定を結んだと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国では「サーベンス・オクスレー法(SOX法)」に基づき、上場企業は監査についてPCAOBの審査を毎年受ける義務がある。PCAOBを監督する米国証券取引委員会(SEC)は、中国と香港がPCAOBの検査に協力していないことを問題視し、米中の規制当局はPCAOBによる中国企業の監査情報へのアクセスについて協議を進めていた(2022年8月18日記事参照)。

PCAOBが発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回の合意の要点は次のとおり。

  1. PCAOBは中国当局に協議したり意見を聞いたりすることなく、検査・調査を行う企業、監査業務、潜在的法令違反を選定する独自の裁量権を持つ。
  2. PCAOBの検査官・調査官が全ての情報が含まれた完全な監査資料を閲覧し、必要に応じて情報を保持するための手続きを整備する。
  3. PCAOBは、検査・調査対象の監査に関わった全ての者に直接聞き取り調査を行い、証言を得ることができる。

米国では2020年に成立した「外国企業説明責任法(HFCAA)」に基づき、PCAOBによる監査を完全に実施できない企業を、SECが「委員会指定企業」として指定している。委員会指定企業に3年連続で指定された企業の証券は、米国の取引所での取引が禁止される。2022年8月26日時点で、中国電子商取引大手のアリババや京東(JD.com)を含む159社が指定されているが、それらの企業は今回の合意により証券取引の禁止を免れる可能性がある。

PCAOBは2022年9月中旬から、監査の実地検査を始める予定だ。年末までに検査を完了する必要があるとしている。検査の場所として香港を選んだ理由について、PCAOBは新型コロナウイルスに関する検疫措置を考慮したとしているが、将来的には中国本土で検査を行う可能性もあると説明した(ロイター8月26日)。

PCAOBのエリカ・ウィリアムズ委員長は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「書類上で合意された文言が、(情報への)完全なアクセスとして実行に移されるかが試される」と述べ、中国側が合意を順守するかを見極める姿勢を示した。SECのゲーリー・ゲンスラー委員長も声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、PCAOBによる検査が完全に実施できない場合は、中国企業の証券は米国で取引禁止になると強調した。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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