NRW州で新政権発足、CDUと緑の党が初めて連立

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年07月05日

ドイツ全16州の中で最大のGDP規模を持つノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州の新政権が6月28日に発足外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同州では5月に州議会選挙が行われ(2022年5月17日記事参照)、キリスト教民主同盟(CDU)が引き続き第1党となったが、単独では過半数の議席数獲得とならず、選挙後に連立交渉が行われていた。その後CDUは、連立相手を緑の党として連立協定書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。NRW州議会の議席数195席のうち、CDUが76議席、緑の党が39議席で、合わせて議席数の60%弱となる。なお、CDUと緑の党による連立政権はNRW州では初。

州首相には、2021年10月から州首相を務めるCDUのヘンドリック・ブスト氏(46歳)が再び就任した。任期は5年。緑の党のモーナ・ノイバウアー氏(45歳)は州副首相および再編・新設された経済・産業・気候保護・エネルギー相として就任した。前政権までは気候保護を担当する官庁がなかったうえ、気候保護と経済・産業に関する業務を1省に統合することは他の州政府でも事例がない。公共放送ARD(6月28日)は、同省が連邦の経済・気候保護省に相当すると説明している。

連立協定書では、NRW州を欧州において気候中立を達成した最初の工業地域にする目標を掲げ、経済と気候保護政策の統合を変革や持続可能な成長の基礎にするとした。関連の政策としては、例えば風力発電では、今後5年間で少なくとも1,000基の風力発電設備を追加で建設する目標を掲げた。この達成のため、計画・承認手続きの標準化、簡素化、短縮、デジタル化を推進する。設置の条件としている、住宅地から1,500メートルの最低距離の確保も廃止する。また、太陽光発電については、公共施設や商業施設、住宅へのソーラーパネルの設置義務を段階的に導入するほか、舗装された土地におけるソーラーパネルの設置や営農型太陽光発電設備(注)、駐車場におけるソーラーパネル設置など、土地の有効利用を目指す。脱褐炭・石炭火力発電については2030年までに達成するが、それまではウクライナ軍事侵攻で影響を受けているエネルギーの安定供給を確保するため褐炭を使用する。

さらに、気候変動対策に伴う産業構造の転換に関しては、NRW州が先駆者となるべく、2022年中に気候中立および競争力維持・向上に向けた協定書を作成する。このほか、欧州において、水素によるエネルギー転換のモデル地域およびハブになることを目指している。

(注)農地に支柱を立てて上部の空間に太陽光発電設備を設置することで、農業を継続しながら太陽光発電を行うこと。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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