米運輸省、各州政府に輸送部門のCO2排出削減目標設定を提案

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月12日

米国運輸省連邦高速道路局(FHWA)は77日、各州政府に対し、州間および非州間高速道路を走行する車両から発生する二酸化炭素(CO2)排出量の目標値を各州独自に定め、目標達成の進捗度合いを連邦政府に報告することを求める規制案を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。地域ごとの温室効果ガス(GHG)排出量を定期的にモニターし、輸送部門への投資やそのほか戦略の効率的な策定に役立てることで、ジョー・バイデン大統領が掲げる2050年の経済全体におけるGHG排出量ネットゼロの目標達成を狙う。

規制案では、各州の運輸省(State DOTs)と都市圏計画機構(MPO、注)に対し、それぞれ2021年を基準年とする削減目標の設定を求めている。各州の運輸省は2年および4年ごとの目標を設定し、隔年で進捗状況を連邦政府に報告する。MPO4年ごとの目標を設定し、4年ごとに各州の運輸省に報告する。両機関での目標設定に当たっては、2050年のGHG排出量ネットゼロ目標達成に資する範囲内で、各州・地域の環境政策などを加味し、柔軟に目標設定することが可能としている。

FHWAは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書(20218月)を引用し、人間の活動が大気中などのGHG濃度を増加させたことにより、1901年から2018年の間に世界の平均海面が上昇していることに加え、2014年の前回IPCC報告書以降に熱波や豪雨、ハリケーン、山火事、干ばつなど異常気象が激甚化しているとした上で、地域コミュニティーの環境関連リスク低減のためにも、輸送部門からのGHG排出削減努力の必要性を訴えた。FHWAは、今回の規制案が「州や大都市圏の間でのデータ比較や、地域コミュニティーでのより良い計画と成果を後押しすることで、既に多くの州が(個別に)行っている取り組みを標準化するものだ」と述べている(オートモーティブニュース77日)。

一方、FHWAは規制案に基づいて各州が設定する目標の実現に向けては、各州が202111月に超党派で成立した、バイデン政権の肝いり政策であるインフラ投資雇用法の予算270億ドルを利用することが可能と説明している。これに対し、シェリー・ムーア・カピト上院議員(共和党、ウェストバージニア州)は、今回の規制案がインフラ投資雇用法に含まれておらず、議会の承認を得ていないと批判した。なお、630日には米最高裁判所が連邦政府による発電所のGHG排出規制に関して、連邦政府に包括的な規制を設ける権限はないと判断するなど、環境規制に関する連邦政府の権限をめぐって議論が起こっており(2022年7月1日記事参照)、今回の規制案の動向も注目される。

なお、FHWAはこの規制案の連邦官報掲載後90日間、パブリックコメントを受け付ける。詳細は連邦政府ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注)市町村など地方政府の枠組みを超えた広域の交通計画の主体。人口5万人以上の都市圏に設置が義務付けられている。

(大原典子)

(米国)

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