世界の産学官40以上の組織、原子力由来水素を推進する連合体「NHI」を結成
(米国、日本)
ヒューストン発
2022年07月29日
世界の産学官40以上の組織は7月26日、気候変動対策を目的として原子力由来水素の推進に取り組む連合体、「原子力由来水素イニシアチブ(NHI)」の結成を発表した。原子力由来水素は、原子力発電による電力を用いて生産される水素のことで、ピンク水素とも呼ばれる。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電と、クリーンエネルギーである水素生産を安定的に両立することから、カーボンニュートラルへの貢献が期待される。
NHIには、国際原子力機関(IAEA)をはじめ、日本の伊藤忠商事、米国の大型商用電気自動車(EV)メーカーのニコラや、米国エンジンメーカーのカミンズ、米国エネルギー大手のコンステレーションなどが加盟している。
NHIは「原子力技術には、クリーンで効率的な方法で水素を生産し、脱炭素化が困難な分野における脱炭素化を推進する可能性がある」と説明している。世界の政策立案者や企業、投資家に向けて、原子力由来水素がカーボンフリーで安全かつ安価なエネルギーの供給において重要な役割を担っていることを発信していくとしている。またNHIは、原子力由来水素に関し、実証試験を促進するほか、金融業界との連携に向けて触媒的役割を果たすことで原子力由来水素の展開加速に取り組む考えだ。
コンステレーションの企業戦略担当バイスプレジデントであるコリーン・ライト氏は「気候変動の専門家は、豊富な水素供給源なくして気候変動の危機を完全に解決することはできないと認めており、原子力エネルギーは、私たちが必要とする規模で水素を製造する最も効率的かつ経済的な方法だ。当社は、米国最大級のカーボンフリーエネルギー生産企業として、水素経済への移行を加速させるための技術、政策、財政的枠組みの構築を支援するNHIを支持する」と述べている。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2050年までにネット・ゼロを達成するためには、年間5億2,000万トンのクリーンな水素の製造が必要としている。このクリーン水素の全量を水電解装置で製造するとした場合に必要となる電力は、原子力発電では3.3テラワット(TW)であるのに対し、太陽光発電では16.5TW、陸上風力発電では13.5TW、洋上風力発電では8.25TW必要としている(「リチャージ」7月26日)。
(沖本憲司)
(米国、日本)
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