米大統領補佐官、台湾への「曖昧戦略」維持を明言、ロシアのウクライナ侵攻は「戦略的失敗」

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、台湾、英国)

米州課

2022年07月25日

米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)は722日、シンクタンクのアスペン研究所がコロラド州で主催したアスペン安全保障フォーラムに参加し、「アトランティック」誌のジェフ・ゴールドバーグ編集長からの質問に応じた。

ウクライナ情勢について、サリバン補佐官は「ロシアは戦場でもっと能力を発揮すると思っていたが、そうではなく、キーウ(キエフ)を奪うというプーチン大統領の基本的な戦略目標は達成されなかった。ロシアによるウクライナ侵攻は、戦略的失敗だった」と指摘した。

また、同補佐官は中国と台湾の情勢に関して「バイデン政権は発足以降、台湾と防衛および安全保障上の関係を強化してきた。中国はウクライナ情勢から間違いなく教訓を得ているが、台湾もウクライナの対応から学んでいる。中国は、大国ロシアが隣国、かつより小国のウクライナで目標を達成できなかった状況から、台湾に対する戦略を再考しようと考えているはずだ」と語った。バイデン大統領がこれまでに3回「台湾有事の際に軍事介入する」と発言したことに関しては、「大統領は日本でも米国の政策に変更はないと明言しており、曖昧戦略を維持している。この戦略が台湾海峡の平和と安全を支えてきた」と述べ、米国の歴代政権が踏襲してきた台湾政策に変更がないことを強調した。

米中関係については「バイデン政権は自国の強みに投資し、同盟国・同志国との関係を重視してきた。また、中国との競争が意に反して紛争や冷戦をもたらさぬよう留意してきた。政権が発足して1年半が経った今、世界のさまざまな地域で米国の地位をうまく確保できていると思う」と語り、国際協調主義の外交政策が一定の成果を挙げているとの認識を示した。

アスペン安全保障フォーラムには、英国の対外情報機関「秘密情報部(MI6)」のリチャード・ムーア長官も参加し、ウクライナ情勢について「これまでに約15,000人のロシア軍兵士が死亡した。これは控えめな推計であり、約10年続いたアフガニスタン紛争でのソ連軍の死亡者数に匹敵する」と発言した。また、同長官は「ロシア軍は今後数週間のうちに人員や物資の供給が難しくなり、戦争を一時停止せざるを得なくなるだろう。それは、ウクライナに反撃の機会を与えることになる」との見解を示した。

(片岡一生)

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、台湾、英国)

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