再エネ、材料コスト増でも発電コストは低下、IRENA報告書

(世界、中国、欧州)

国際経済課

2022年07月15日

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は713日、報告書「2021年の再生可能エネルギー発電コスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。それによると、2021年は物価上昇や供給上の制約があったものの、世界の発電コスト(注)は前年比で、陸上風力が15%、洋上風力が13%、太陽光が13%、それぞれ減少したという。2021年に世界で新たに導入された再生可能エネルギーの約3分の2(発電容量ベース)の発電コストは、G20で稼働中の石炭火力発電(コストが最も低いタイプ)よりも低かった。

鉄鋼などの材料価格は上昇したものの、2021年に発電コスト低下が実現した主な理由として、報告書は以下の点を挙げた。(12020年後半や、多くの再エネプロジェクトの建設が始まった2021年前半までは、設備コストの上昇幅がまだ緩やかだった、(2)大規模プロジェクト(の開発者)は購買力が大きく、リードタイムが長い(ため、余裕をもって材料の準備をしていた)。また(過去5年で大規模プロジェクトによるスケールメリットが出ていた)欧州以外でも容量の追加が主流と(なり、スケールメリットが出るように)なっている、(3)多くのプロジェクトでコスト増加分の一部もしくは全部を予備費で吸収できた、(4)太陽光発電モジュールの効率性の増加や風力発電タービンの大型化など技術レベルの向上、生産性の向上や生産規模の拡大が続いた、(5)太陽光や風力の新規案件の主戦場である中国で、2021年に風力発電プロジェクトの開発事業者がタービンの価格引き下げを迫るなど、物価や輸送費を引き下げたこと。

他方、2022年の価格引き上げ圧力は前年よりも顕著となると同報告書は指摘する。その理由としては、材料コスト引き上げとプロジェクトコストとのタイムラグの関係から、2021年に反映されなかった材料コスト引き上げ分が設備価格に反映されるためだ。ただし、設備コストが占める割合は太陽光で24%、陸上風力で49%にとどまり、発電コストへの影響はそれほど大きくない。

IRENAのフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は今回の発表に合わせて「2022年は再エネによる発電がいかに経済的に実現可能かを示すいい例となった。現在のエネルギー危機が続いたとしても、再エネは化石燃料の価格や輸入量の不安定さから経済を切り離し、エネルギーコストを抑制し、市場のレジリエンスを高める」と述べた。

(注)設備投資や運転・保守など発電にかかる各種コストをベースに算出される均等化発電原価(LCOE)。

(古川祐)

(世界、中国、欧州)

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