第1四半期GDP成長率は前年同期比マイナス1.6%、経済危機の影響表面化も利上げ継続

(スリランカ)

アジア大洋州課

2022年07月12日

スリランカのセンサス統計局は628日、2022年第1四半期(13月)のGDP成長率は前年同期比マイナス1.6%と発表した。過去2年間に経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルス禍からの復調が期待される2022年ながら、インフレや通貨安などの影響から、成長率は2021年第3四半期(79月)のマイナス5.8%以来のマイナス成長となった。経済危機の影響が実体経済に表れ始めたといえる。

産業別にみると、農林水産業は前年同期比6.8%減少し、3四半期連続のマイナス成長となった。化学肥料の調達が進まないことが要因の1つとして挙げられる。化学肥料の不足は農業生産に深刻な影響を与え、特に主食作物のコメの生産量を大きく減少させた。農林水産業の中でもコメのGDP成長率はマイナス33.8%と大きく落ち込んでいる。結果的に、農林水産業の成長率は2015年以降で最大の落ち込み幅となった。多くの産業活動に不可欠な燃料輸入が十分に進まなかったことで、工業部門も4.7%減少した。他方、サービス業は主力の観光業が25.2%成長するかたちで0.7%のプラス成長を確保したものの、前期の4.3%増からは減速した。

1四半期成長率がマイナスの中、インフレ率は上昇が続き、ラニル・ウィクラマシンハ首相が自国を「破産国家」と発言するほど、先行きも厳しい経済状況が想定される。こうした中、中央銀行は、景気下支えよりも、止まらないインフレ対策に軸足を置いている。中銀は77日、政策金利の常設貸出金利を15.5%、常設預金金利を14.5%と、それぞれ1ポイント引き上げた。金融政策委員会は、政策金利の引き上げが中小・零細企業や金融部門など全ての経済活動に与える影響と、短期的なインフレによる悪影響を比較した結果としている。インフレ率が直近では45.3%を記録する状況下、金融引き締め政策への傾斜はやむを得ないものの、利上げはさらなる経済の悪化を招くリスクがある。

(新田浩之)

(スリランカ)

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