上半期のMPF運用利回りは過去最低、解雇補償へのMPF充当は廃止へ
(香港)
香港発
2022年07月14日
香港の強制退職積立金(Mandatory Provident Fund:MPF)制度の独立系調査機関である積金評級(MPFレーティング)は7月6日、MPFの運用実績を示す「MPFR All Fund Performance Index」について、2022年上半期(1~6月)は調査開始以来最低のマイナス12.96%だったと発表した。第2四半期(4~6月)はマイナス7.29%、6月単月はマイナス3.02%だった。
ファンド別の上半期実績を見ると、マイナス幅が大きかったのは、米国株ファンド:マイナス20.55%、グローバル株ファンド:マイナス20.35%、欧州株ファンド:マイナス18.73%だった。第2四半期と6月単月の実績では、香港・中国株ファンドがそれぞれ0.18%、3.01%となり、各ファンドのなかで唯一プラスとなった。
加入者1人当たりの平均残高は6月末現在、23万500香港ドル(約403万円、1香港ドル=約17.5円)で、2021年末の25万7,700香港ドルから10%強減少した。
積金評級の叢川普(フランシス・チュン)チェアマンは「世界市場の混乱により、上半期のリターンは最悪だった」としつつ、「MPF総資産は心理的に重要な1兆香港ドルの水準を維持しており、加入者の平均残高も23万香港ドルと健全な水準にある」とコメントした。
香港政府は6月17日、企業が従業員に支払う解雇補償金(Severance Payment)と長期服務金(Long Service Payment)について、MPFの雇用主分積立金から充当できる制度を廃止する改正条例を公布した。
解雇補償金と長期服務金は、それぞれ勤続2年以上もしくは5年以上の従業員が解雇や退職した際に企業が支払うもので、これまでは、MPF口座に企業と従業員が積み立てた資金のうち、企業積立分を解雇補償金と長期服務金の原資に充当できた。今回の改正により、早くて2025年以降に充当制度は廃止される。なお、廃止後最長25年間は、過渡的措置として政府からの補助金もあり、企業の負担増へ配慮したかたちになっている。
(渕田裕介)
(香港)
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