9月開始の長期滞在者(LTR)ビザの概要、投資委員会が説明
(タイ)
バンコク発
2022年07月25日
タイ投資委員会(BOI)は6月29日、富裕層の外国人や投資家をタイに呼び込むために新設する「長期滞在者(LTR)ビザ」に関するセミナーを行った。LTRビザの保有者は、タイに最大10年間(有効期間5年、最長5年延長可能)居住することが可能となる。また、出入国の際、空港ではファストトラックを利用可能で、90日レポート(注1)や出国時の再入国許可の取得が不要となるほか、高度専門職は所得税が17%に減税されるメリットもある。他方、同ビザ保有者は年に1度、居住地報告をする必要がある点に注意が必要だ。
LTRビザの対象となる外国人は以下の4つのカテゴリーに分類され、それぞれ以下の条件を満たす必要がある。
1.富裕層
- 純資産額:100万ドル以上
- 個人所得(ビザ申請前の直近2年間、以下同):年間8万ドル以上
- タイの国債、企業・公社、ベンチャーキャピタル、不動産への投資額が50万ドル以上
2.裕福な年金受給者
- 50歳以上で定期的な年金収入あり
- 個人所得:年間8万ドル以上。または年間4万ドル以上8万ドル未満で、タイの国債、企業・公社、ベンチャーキャピタル、不動産投資額が25万ドル以上
3.タイで働くプロフェッショナル(専門家)
- 個人所得:年間8万ドル以上。または年間4万ドル以上8万ドル未満で、修士号以上の学位取得者、知的財産の所有者、シリーズA資金(注2)の調達者のいずれかに該当
- 雇用主の場合:出身国で証券取引所に上場している公開会社(または創業3年以上の会社)かつ、申請日までの直近3年間の売上高の合計が1億5,000万ドル以上
- 申請日までの直近10年間に、現在の雇用に関連する分野での実務経験が5年以上
4.高度専門職
- 個人所得:年間8万ドル以上。または4万ドル以上8万ドル未満で、科学技術分野の修士号以上の学位、またはタイでの職務に関連して高度な専門知識を有する者
- タイのターゲット産業(注3)に従事、またはタイ政府機関、タイ国内の高等教育機関、研究機関、専門教育機関のいずれかに勤務(ただし、タイ政府機関、タイ国営組織に勤務する場合は所得条件なし)
1~4のいずれも、5万ドル以上の健康保険、またはタイ国内での入院・治療費を保証する有効な社会保障、または10万ドル以上の銀行預金を有している必要がある。なお、扶養家族は、20歳までの子供を含む最大4人まで認められる。
9月1日以降、LTRビザの取得希望者はオンラインで申請できる。ビザ取得の許可が出た者は、各国にあるタイ大使館・領事館、またはタイ国内の移民局でLTRビザを取得できる。または、バンコク市内のチャムチュリースクエア内/各県労働局内にあるワンストップサービスセンター(OSS)でビザやデジタル労働許可証を受け取ることができる。
(注1)駐在員やその家族など90日以上タイに継続して滞在する者は、90日ごとに居所などを通知する「TM47」フォームを入国管理事務所に提出することが義務付けられている。
(注2)投資家が企業に投資する段階(投資ラウンド)の1つで、呼び名によって、企業の成長段階がわかる。
(注3)タイの国家指針「タイランド4.0」の下、政府は電気自動車やロボット、バイオなど12の産業を投資促進すべきターゲット産業に指定している。
(北見創、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ)
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