バーデン・ビュルテンベルク州産業クラスター、自動車産業の将来の構造転換を分析

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年07月22日

ドイツ連邦経済・気候保護省などが運営する産業クラスター情報サイト「クラスター・プラットフォーム・ドイツ」は78日、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク(BW)州のクラスターが自動車産業のサプライチェーンに関する報告書を作成したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

報告書を作成したのはイー・モビール・ベーベー(e-mobil BW)。同社はBW州政府が2010年に設立した法人で、同州内の企業・団体・機関などがさまざまな作業グループや他の形式の組織に参加しており、モビリティー産業の構造転換のプロセスに協力している。今回発表した報告書の題名は「自動車産業の将来のサプライチェーンと新たな付加価値の構造」で、約250ページに及ぶ(ドイツ語で閲覧可PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

報告書はまず、自動車産業と関連機械産業の現状を分析、ドイツ乗用車メーカーの国内生産比率は26%(2020年)にすぎない点などを指摘し、ドイツはグローバルなサプライチェーンに組み込まれているとした。その上で、報告書は新型コロナウイルス感染拡大やその影響による半導体不足の自動車産業への影響を分析。メーカーはサプライチェーンの分断や混乱を受け、サプライチェーンのレジリエンスを高めようと部品調達の多様化や在庫増などを進めた一方、それは生産の最適化やコスト削減につながらないため、難しいかじ取りを迫られているとした。

また、報告書は、今後乗用車の電動化がさらに進めば、蓄電池システムやセルの原材料・部品のアジア地域、特に中国への依存がさらに高まるとし、欧州域内に研究開発・生産ネットワークを構築することが必要とした。中・長期的には脱炭素化やデジタル化、国際展開などへの対応も必要で、特に中小の部品メーカーにとって高いハードルになるとした。

連邦レベルでも専門家による協議進む

電動化などを受けた自動車産業の構造転換への対応は、州レベルだけではなく、連邦政府でも進んでいる。経済・気候保護省は628日、「自動車産業の構造転換」という研究会を省内に発足外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますさせた。これは、連邦政府の連立協定書(2021年11月26日記事参照)で実施を約束していた政策の1つで、研究所・大学などの研究者や、フォルクスワーゲン、ボッシュなどの民間企業、労働組合などに属する専門家13人がメンバー。

1回会合では、(1)自動車バリューチェーンの脱炭素化、(2)「スマートカー」のためのソフトウエア・デジタル化・自動運転、(3)自動車バリューチェーンや供給網のレジリエンス構築、(4)構造変化の視点からの雇用・労働者教育など、(5)規格化・標準化を重点課題として、今後数カ月取り組むことなどが決まった。

(高塚一)

(ドイツ)

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