プーチン大統領、サハリン2運営主体の再編を命じる大統領令に署名

(ロシア、日本、英国)

欧州ロシアCIS課

2022年07月04日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月30日、石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の運営主体の再編を命じる大統領令(2022年6月30日付大統領令第416号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))に署名、同大統領令は同日発効した。非友好国によるロシアへの制限措置に対する対抗策の一環。

大統領令では、ロシア政府とサハリン2の運営主体であるサハリン・エナジー・インベストメント(以下、サハリン・エナジー)との間で1994年6月22日に締結された、生産物分与協定(PSA、注)の内容を一部の外国企業が履行しなかったとして、a.ロシア政府がサハリン・エナジーの全ての権利と義務を譲渡させる新会社を設立すること、b. PSAに基づくサハリン・エナジーの資産を直ちにロシア政府に移転させると同時に、新会社にはPSAに基づくサハリン2の無償使用権が譲渡されること、c.新会社における資本割合はサハリン・エナジーにおける株主の割合を引き継ぐが、正式な株式が決まるまではロシア政府が管理すること、などが定められた。

サハリン・エナジーの株主(以下、旧株主)は、新会社が設立されてから1カ月以内にロシア政府に対して、新会社の資本割合の受け入れを通知しなければならない。ロシア政府は通知を受けて、新会社の株式を旧株主へ譲渡するか3日以内に判断する。

旧株主が新会社の株式を取得しない場合、取得しないことが決まった日から4カ月の間にロシア政府がそれらの株式の評価額を定め、ロシア法人に売却される。売却によって発生した現金は、旧株主名義で開設された返済用ルーブル口座(2022年3月9日記事参照)に振り込まれる。

サハリン・エナジーの株主は、ガスプロム(50%プラス1株)、英国石油大手シェル(27.5%マイナス1株)、三井物産(12.5%)、三菱商事(10.0%)。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、株主の1社であるシェルは、サハリン2事業におけるガスプロムとの合弁を解消する考えを表明していた(2022年3月1日記事参照

サハリン・エナジーは、オフショア石油・ガス生産プラットフォーム「ピルトン-アストフスカヤA」「ピルトン-アストフスカヤB」「ルンスカヤA」のほか、パイプライン設備、石油輸出ターミナル、液化天然ガス(LNG)プラントなどを有する。

(注)国が投資家に対し、一定の鉱区において鉱物を探鉱、試掘・採掘する排他的権利を付与し、採取物(生産物)が投資家と国の間で分与される仕組み。油田とガス田の所有権はロシアが保持し、サハリン・エナジーはこれらの油田の探査と開発に必要な資金を投資する。

(菱川奈津子)

(ロシア、日本、英国)

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