グスマン経済相の辞任で今後の経済政策に注目集まる

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年07月06日

アルゼンチンのフェルナンデス政権下で対外債務の再編交渉や、財政、エネルギー、物価政策を担ってきたマルティン・グスマン経済相が74日に辞任し、シルビナ・バタキス氏が新経済相に就任した。

グスマン氏は72日に辞意を表明。翌3日にはバタキス氏を経済相に任命することが発表された。グスマン氏は20208月に650億ドルの債務再編を担い、民間債権者と合意した。20223月には450億ドルの債務再編でIMFと合意し、財政均衡とインフレ抑制を柱とした経済政策プログラムを推し進めてきた。グスマン氏の存在は、アルゼンチンの対外的な信用を支える1つの要素だったため、同氏の退任は不安材料となり、74日に並行為替レートは一時、前日比40ペソ安い1ドル280ペソまで下落した。米国の祝日明けの5日は、米国市場でアルゼンチンのドル建て国債の価格が急落し、カントリーリスク指数EMBIは前日比9.4%上昇した。

後任のバタキス氏は2011年から2015年まで、現在の工業生産・開発相で当時はブエノスアイレス州知事だったダニエル・シオリ氏の下で同州経済相を務めた。直近までは、内務省で連邦政府と州政府の調整役を担っていた。バタキス氏は経済相就任後の4日夜、報道番組に出演し、現行の経済政策を維持する方針を示した。資本取引規制については、外貨の配分を適切に行うべく企業と対話し、生産財の不足の解消に努めるとした。エネルギー補助金の削減に向けた所得階層別の料金設定には引き続き取り組む。インフレは複合的な要因によるもので、価格統制だけでなく、企業による物資の増産とそのために必要な外貨の配分について企業部門と話し合う必要があると述べた。恒常的な財政赤字は避けなければならず、財政の均衡を目指す。また、消費が経済成長のエンジンであるべきで、そのためには雇用や購買力の改善は重要だと強調した。なお、グスマン氏の退任に伴い、同氏の経済政策チームもグスマン氏とともに辞意を表明したため、バタキス氏はこれから自身のチームを組み、取り組んでいくことになる。

20225月には物価行政が工業生産・開発省から経済省に移管され、経済省の責任は増した。一方、2023年には大統領選挙を控えており、与党連合内では歳出圧力が今後高まる。バタキス経済相がIMFとの約束を堅持するべく、現在の経済政策の路線を維持できるかに注目が集まる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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