企業も消費者もインフレ長期化を懸念、カナダ中銀景況感調査

(カナダ)

米州課

2022年07月06日

カナダ中央銀行は74日、企業経営者と消費者に対する景況感調査結果を発表した(注)。政策決定の参考とするために中銀が四半期ごとに実施しているもので、今回の2022年第2四半期(46月)の調査では、旺盛な需要に対する労働力不足やサプライチェーンの混乱により、物価上昇に対する懸念は、第1四半期(13月)の調査結果(2022年4月12日記事参照)からさらに高まっていることが明らかになった。

企業経営者はインフレ長期化、労働コスト上昇を懸念

企業経営者に対する調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、新型コロナウイルスの影響の回復期に生じた急速な需要増加からの落ち着きにより、売り上げの伸びは今後鈍化してくるとする回答が多くみられた。売り上げ鈍化は主に住宅、資源、運輸関連など、新型コロナウイルスによる影響の回復が早かった業種にみられる。鈍化の理由として労働力不足を挙げる企業もあった。

前回の調査でも多くの企業が挙げた労働力不足、サプライチェーンといった課題について、「労働力の制約に問題がある」とした企業は前期比4ポイント増の63%と過去最高を更新したほか、「サプライチェーンにボトルネックがある」とした企業は過去最高を記録した前期から1ポイント減の44%とほぼ横ばいだった。サプライチェーンの課題を抱える企業の約半数は、2023年末まで、あるいは翌年以降も問題が続くと予想している。最近みられた理由として、一部の企業は中国のロックダウンを挙げた。

旺盛な需要に支えられ、多くの企業が2023年にかけて投資や支出の増加、雇用拡大を予定しているが、その一部からは、金利上昇に伴う資本財の価格上昇が支出計画に影響を与える可能性があるとの懸念が出ている。

賃金上昇の見通しに関し、今後1年間の労働コストの変化を問う質問に対する回答をみると、賃金の予想平均上昇率は前期比0.6ポイント増の5.8%となった。賃金上昇の理由として、回答企業の59%が「インフレもしくは生活費の調整」を挙げたが、それを上回る61%が「労働力の維持」を挙げた。前期に続き、これが最多となっていることからも、労働力不足により、足元の雇用維持に腐心している状況が読み取れる。

インフレは高水準で長期化するとみる企業が増えている。インフレが続く期間を「12年」と回答した割合は前期の28.7%から18.8%と減少した一方、「23年」は29.7%から31.7%と増加した。

消費者の支出、財は減少するも、サービスは増加

消費者に対する調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます結果によると、インフレが拡大、長期化するとの見方が高まっており、1年後のインフレ率の予想平均値は前期比1.7ポイント増の6.8%、2年後は同0.4ポイント増の5.0%となった。品目では、食料、ガソリン、家賃など特に生活必需品に対する物価上昇懸念が強い。

当局のインフレ調整能力に影響を及ぼす課題としては、「長期化する新型コロナウイルスの影響全般」は前期の31.2%から23.7%に減少した一方、「サプライチェーン問題」が37.9%から41.8%と約4ポイント増加し、最多の回答となった。

家計消費については、今後12カ月間、大幅に支出を増やす予定だ。新型コロナ禍で増加した貯蓄の約4分の120222023年に消費に回すことが見込まれる。しかし、向こう1年のインフレ率を6.8%、消費支出の伸び率を4.9%と予測しており、インフレ率が約2ポイント上回る結果となった。中銀は購入できる量が減少する可能性を指摘している。

「金利が1ポイント上昇した場合に、どのような行動を取るか」との問いには、「支出を削減し、貯蓄を増やす」「高額商品の購入を延期する」「負債を返済する」が大半で、「住居や家具などの高額商品を早期に購入する」との回答は圧倒的に少なかった。

インタビュー結果によると、消費者のサービスに対する支出は、財に対する支出よりも金利上昇の影響を受けにくいことが示唆されたという。回答者は、高額商品の購入を控える一方で、新型コロナウイルスに関する規制や不安が和らぐと、サービスへの支出が増えると中銀は分析している。

(注)同調査は、企業経営者に対して5927日、消費者に対しては428日~53日と6310日にかけて行われた。

(高山さわ)

(カナダ)

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