与党分裂、マハーラーシュトラ州首相が交代

(インド)

ムンバイ発

2022年07月29日

インド西部マハーラーシュトラ(MH)州で629日、ウッダブ・タークレー州首相が辞任した。翌30日にエクナット・シンデ都市開発相が州首相就任宣誓式を行い、第20MH州首相に就任した。また州副首相には、政権与党に返り咲いたインド人民党(BJP)のデべンドラ・ファドナビス元州首相が就任した。

新州首相の誕生までには、マラティー民族至上主義を掲げる右派政党の与党シブセナの内部分裂と最大野党BJPの工作活動によって、シブセナからの造反組が多数派となってBJPと新連立を組み、政権を奪取するまでの双方の動きが毎日速報されていた。

タークレー前州首相は、自ら辞任し政権混乱を収めたかたちだが、与党から大量造反した多数派議員について州議会でのシブセナ除籍処分の有効性と、自身の同党首としての地位確認請求を最高裁に行っている。それに対して、多数派リーダーとして政権を握った、シンデ州首相率いる造反組は「民主主義の下で多数派のわれわれが正当なシブセナ」と主張している。シブセナ多数派は、ナレンドラ・モディ首相率いるBJPと約3年ぶりに連立することで政権運営を継続することを、他方、下野したシブセナ少数派は、これまで連立を組んでいた国民会議党(NCP)とインド国民議会派(INC)との関係を継続することを表明しており、シブセナ内分裂が議会全体を巻き込み、状況を複雑にしている。

720日に最高裁が裁定を下す予定(注)だったが、シブセナ創設者の息子として党組織を死守したいタークレー前州首相の動きに注目が集まっている。なお、タークレー前州首相政権時の州政府閣僚は、同州首相の辞任と同時に全員総辞職しており、最高裁判決が出るまで空席が続くことになる。

シンデ新州首相は、都市計画相の在任中に、ムンバイ都市圏開発公社(MMRDA)会長を兼任していた。在任中、日本の「新幹線」方式を採用した高速鉄道建設事業(ムンバイ~アーメダバード間総区間508キロ、注2)(2017年10月30日記事参照)のムンバイ駅建設予定地に、大規模ワクチン接種施設「ジャンボCOVIDケアセンター(CCC)」を建設しており、それが2023年末の高速鉄道供用開始を目指す国家プロジェクトの遅れの要因となっている。同氏率いるシブセナ多数派が推進派BJPと連立したことで、同事業の今後の動向を注視する必要がでている。

(注1)最高裁は720日の裁定を81日に延期。

(注2)日印間で締結した同事業の公式距離は505キロ。

(松永宗徳)

(インド)

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