日印首脳会談の開催で存在感示す-関心高まるグジャラート州の現状(3)-

(インド)

ニューデリー発

2017年10月30日

安倍晋三首相インド訪問(2017年9月)時の日印首脳会談は、日本企業の進出加速や日本の新幹線方式の導入などを背景に、グジャラート州で開催された。関連行事では日本の関連機関・企業から新たな事業や投資計画が発表され、日印事業における同地の重要性を印象付けた。シリーズの最終回。

高速鉄道建設事業に集まる期待

安倍首相は9月13~14日、グジャラート州アーメダバードおよびガンディナガルを訪れた。日印両国は、特別戦略的グローバル・パートナーシップに基づき、毎年首相が相互の国を訪問しており、今回が通算10回目の首脳会談となった。今回の訪印は3つのパートに分かれており、首脳会談、ムンバイ~アーメダバード間をつなぐ高速鉄道建設事業(MAHSR)起工式、経済セッションが開催された。

首脳会談では、地政学的なリスクに関わる防衛・安全保障の強化、経済面では高速鉄道や人材育成など、幅広い項目において話し合いが持たれた。経済面では、MAHSRが1つの柱になっており、両首脳は同計画への円借款1,000億円に関する書簡の交換を歓迎した。また、川崎重工と地場バーラト重電機(BHEL)が鉄道車両分野で技術協力を進めていくことを受け、日印企業のビジネスマッチングの努力を評価した。

日本企業の対印投資に関しては、日印間の投資促進のための共同計画「日印投資促進ロードマップ」が取り決められたほか、技能労働者の不足に対応するため、スズキ、トヨタ、ダイキン、ヤマハ発動機の各現地法人による日本式ものづくり学校(JIM:Japan-India Institute for Manufacturing)の開設を評価した。グジャラート州への投資促進に関しては、経済産業省と同州間で投資促進に係るプログラムが合意されたほか、ジェトロのビジネス・サポートセンター(BSC)をアーメダバードに設置することについても言及があった。

15社がグジャラート州への投資表明

経済セッションは、5,000人規模の参加者を得て開催された。同セッションでは、日印政府や企業からさまざまな報告が行われ、スズキからは、東芝、デンソーとの日本企業3社の共同事業によるインドで初のリチウムイオン電池工場建設が発表された。登壇したスズキの鈴木修会長は、同州に設立した単独資本会社スズキ・モーター・グジャラート(SMG)に関し、稼働中の第1工場に続いて第3工場までの建設が決定しており、「同州での合計生産台数は75万台、2,300億円の投資と1万人の雇用を見込む」とした。

また、ジェトロの石毛博行理事長は、日本企業15社が同州への投資を表明したことを紹介。本件に関する総投資予定額は約220億ルピー(約374億円、1ルピー=約1.7円)、2,800人ほどの雇用が見込まれているとした。石毛理事長は、グジャラート州でのジェトロのBSCの設置とこれによるさらなる投資促進支援機能の強化についても言及した。

セッションの最後に登壇した安倍首相は「日本の技術とインドの豊富な人材で、世界を相手にしたものづくりができる」とし、官民を挙げて「メーク・イン・インディア」を後押しすることを表明した。モディ首相はこれを受け、高速鉄道や人材育成、個別企業の投資案件への感謝を表しつつ、「政権発足からの3年、ビジネス環境の改善に注力してきた。これがニューインディアへの準備だ。インドには、世界的なイノベーションのエコシステムがある」とし、「強い日印関係がアジアや世界をリードしていく」と締めくくった。

写真 経済セッションでの投資表明の様子(ジェトロ撮影)

ジェトロは経済フォーラムと視察ツアーを実施

首脳会談の公式行事の一環として、ジェトロは9月14日、日本政府観光局(JNTO)などと共に、「日本・インド経済フォーラム」を開催し、日印企業の幹部約500人が参加した。また、翌15日には、アーメダバード周辺の投資環境視察ツアーを主催し、約50人が参加した。出発式では、ビジャイ・ルパニ州首相が同州の投資ポテンシャルや日本企業への期待について語った。ツアーは、ホンダ・モーターサイクルアンドスクーター・インディア(HMSI)第4工場やマンダル日本企業専用工業団地内の三菱アルミニウム100%子会社MA EXTRUSION INDIA、豊田通商が運営するプラグアンドプレイ型貸し工場を訪問したほか、サナンドIII(コーラジ)工業団地(仮)の建設予定地を視察した。さらに16日には、同州北西部で地場コングロマリットのアダニ・グループが運営するムンドラ港も視察した。同港はカッチ湾に面し、インド西部の輸出基地としての活用が見込まれる。

(古屋礼子)

(インド)

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