日米財務相会談、為替相場の変動に適切に対応することを確認

(米国、日本)

米州課

2022年07月13日

米国のジャネット・イエレン財務長官は712日、東京都内で鈴木俊一財務相兼金融担当相と会談した。両財務相は会談後に発表した共同声明〔外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日(仮訳)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕で、歴史的に重要な転換点を迎える中、世界経済が直面する諸課題に日米両国が協力して取り組むとともに、力強く強靭(きょうじん)で持続可能な経済成長を促進し、ルールに基づく世界経済秩序を強化するとして、日米間の結束を強調した。

両財務相は、ロシアによるウクライナ侵攻が、食料危機や、食料・エネルギー・コモディティ価格の高騰を引き起こしているとした上で、ウクライナ侵攻による経済的な影響が為替相場の変動を高めており、経済および金融の安定に悪影響を及ぼしているとの認識を確認。日米両国が為替相場の変動に対して、引き続き緊密に協議し適切に対応すると明らかにした。なお、円相場は同日に1ドル=137円台を記録するなど、足元では急速な円安が進行している。財務省、金融庁、日本銀行は2022610日、国際金融資本市場に係る3者会合を開き、会合後の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合には適切な対応をとる」と為替介入の可能性を示唆していた。鈴木財務相は712日、イエレン長官との会談後の記者会見で、同長官に対し急速な円安の進行について日本側の懸念を伝えたことを明らかにした。一方で、イエレン長官は為替介入について「まれで例外的な状況でしか正当化されない」として、慎重な見解を示したとしている(ロイター712日)。

共同声明では、ウクライナ情勢から、食料危機、食料・エネルギー・コモディティ価格の高騰、為替市場、新型コロナウイルス対応、気候変動対応、債務問題、インフラ、国際課税、コーポレートガバナンスまで、世界経済が直面する諸課題について幅広く言及している。

ウクライナ情勢については、同国への支援の継続と同国との連帯を堅持するとして、引き続き日米両国がロシアに対する経済・金融制裁を遂行すると述べた。また、食料危機について、国際金融機関(IFIs)に対し、「食料不安を解決するための行動計画」に基づき、影響を受ける国々への金融支援を実施するよう求めた。エネルギー価格の高騰ついては、影響を受ける国々がエネルギー調達を維持するための方策について検討しつつ、プライスキャップ(価格上限)の設定を含めて、エネルギー価格の上昇を抑制する方策を引き続き探求するG7の取り組みを歓迎するとした。

また、債務問題に直面している低・中所得国に対して多額の債権残高を有する債権国として中国を例示し、債務負担の改善に向けて建設的に貢献することを求めると述べた。特に、スリランカにおける経済危機に触れ、債権国間の協調の重要性を強調した。

なお、イエレン長官は同日、黒田東彦日銀総裁とも会談を実施。今回の訪日後、インドネシアで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議に出席したのち、韓国を訪問する予定。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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