マレーシアの半導体産業、さらなる高付加価値化に潜在性を指摘、ジェトロ調査

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年07月26日

マレーシアでは20182019年以降、米中貿易摩擦を背景に半導体分野を中心とした電気・電子産業の投資案件が相次いでいる。新型コロナ禍を経た半導体需要の高まりも受け、2022年以降もこの傾向は変わらず、ペナン州を中心に半導体向けの新規・拡張投資が活発だ(2022年6月29日記事参照)。このほどジェトロが公表した調査レポート「マレーシアの電気・電子産業半導体産業を中心に」によれば、国内要因と海外要因の双方から、半導体産業の投資先としてマレーシアのポテンシャルが高いことが示唆された。

国内の要因としては、50年間以上にわたり構築された包括的な電気電子産業の蓄積の存在が大きい。特にペナン州には300社以上の多国籍企業が存在し、前工程から後工程までの生産を担う。半導体バリューチェーンのいずれの部分においても、マレーシア国内で供給が可能だということを意味する。語学力や技術力の面で優秀な人材プールがあることも大きな強みだ。こうした既存リソースを活用しながら、先端技術の発展や製品の高付加価値化、多品種・小ロット化を進める拠点として、マレーシアには潜在力があるとレポートは指摘する。企業へのインタビューからも、充実したエコシステム、人材、天然資源の存在による省コスト化、政府の支援、立地、災害が少ないことなどが、マレーシアの半導体市場の魅力として言及された。

海外要因については、米中貿易摩擦に由来する拠点移転や代替的な調達先としてのマレーシアへの関心の高まり、半導体サプライチェーンの混乱、デジタル化への移行といった世界的な動きが、結果的にマレーシアの電気・電子産業に恩恵をもたらした。とりわけ新型コロナウイルスの影響が、5G(第5世代移動通信システム)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などデジタル経済への移行を一層加速させ、半導体関連のアプリケーションやデバイス市場の急成長にもつながった。

レポートでは、マレーシアの半導体産業の歴史的変遷、貿易投資概況、国内で製造される半導体の種類や用途、主要プレーヤー、これら企業の投資事由、新型コロナ禍での対応状況などを、統計や在マレーシア地場・外資系企業、投資誘致機関などへのインタビューから分析。半導体の幅広い応用を提案する能力にたけた日本企業に対しては、こうしたノウハウの移管や共同研究開発といった側面で、マレーシア地場企業と連携を深める余地がまだあり、そこにこそビジネスチャンスもあると指摘している。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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