米国の「海産哺乳類保護法」に基づく魚類・加工品の輸入規制措置、2023年1月から施行へ

(米国、日本)

ニューヨーク発

2022年07月05日

クジラやイルカなど海産哺乳類を混獲(注1)する漁業によって漁獲された水産物および水産加工品の米国への輸入を規制する、海産哺乳類保護法(MMPA:Marine Mammal Protection Act)の措置が2023年1月1日から施行される。

MMPAは、1972年に成立した米国の法律だ。米国海洋大気局(NOAA)は2016年8月に同法に基づく最終規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表し、米国に向けて水産物および水産加工品を輸出する輸出国の海産哺乳類が混獲によって偶発的に命を落とす、または、重傷を負うケース削減に向けた取り組みを、米国基準に照らして評価する条件を設定していた。また、輸出国側が米国基準に相当する基準を構築するため、最終規則施行日の2017年1月1日から2021年12月31日まで5年間の免除期間を設けていた。

同最終規則は、5年間の免除期間の間に、(1)外国漁業の特定、(2)海産哺乳類の規制プログラムの構築、および(3)米国の基準との同等性の認定、を実施することとしており、米国に向けて水産物および水産加工品を輸出する国に対して対米輸出を規制するプログラムの構築を行った上で、その進捗を米国へ報告することが義務付けるとしていた(2016年11月21日記事参照)。

一方で、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、輸出国側で関連法規の制定手続きや科学的調査航海の実施が遅れたほか、各輸出国から米国へのプログラム構築の進捗報告が困難な状態にあったとして、NOAAが所管する米国海洋漁業局(NMFS)は2020年10月に、国際的な水産物貿易の混乱を抑えるために、2021年末までとしていた免除期間を1年延長し、2022年12月31日までとする変更を発表していた。米連邦官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)によると、具体的には、2019年には米国の貿易相手国約130カ国のうち96カ国がMMPAの輸入規則に準拠した進捗報告書を提出していたものの、2020年においては、そのうち55カ国が漁船リストの情報を更新していない状況となっていたとしている。

なお、日本政府はこれまで米国の求めに応じて、輸出実績のある、または輸出見込みのある漁業種類(漁法)のデータを提出し、約260種の漁業を申請している。

米国は今後、2022年11月までに申請のあった国々とそれぞれ協議を実施して、同月末までに米国基準との同等性認定を公表する。その後、2022年12月に証明書発給体制の整備をし、2023年1月に輸入規制措置を開始する予定だ。米国が、申請国の漁業において米国と同等の混獲削減措置が導入されていないと判断した場合には、当該漁業で漁獲された水産物および水産加工品の対米輸出が不可となる。また、混獲の恐れがあると判断した場合や、混獲の恐れはないものの米国が特定するHSコードに対象の水産物および水産加工品が含まれる場合には、禁輸漁業の漁獲物が含まれていないことを証明する認容証明書の提出が必要となる可能性がある。

(注1)別の種を意図せずに漁獲してしまう、もしくは意図していたよりも小さい個体や幼体を捕獲してしまうこと。

(注2)米国連邦官報では、2020年11月3日に公示。

(荒高弘)

(米国、日本)

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