米・メキシコ首脳会談、USMCAの完全な実施や移民問題での協力を確認

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2022年07月14日

米国のジョー・バイデン大統領は712日、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領をホワイトハウスに招き、2国間首脳会談を行った。

ホワイトハウスが公表した両首脳共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両国は経済、国境インフラ、治安対策、移民問題、労働者保護、気候変動などの分野で協力を推進する。両首脳は冒頭で、混沌(こんとん)とする世界情勢に触れた上、民主主義、包摂的な成長、透明性、法の支配、人権が2国間の安全と繁栄を支える中核的価値観であることを確認した。また、カナダも含めて、北米の競争力の基盤は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)だとし、同協定の完全な実施に向けたコミットメントを再確認した。2022年末にメキシコで開催される第10回北米首脳会議では、サプライチェーンの強化や域内での生産拡大などに関して協議し、両国間では9月のハイレベル経済対話(HLED)で同様の課題に焦点を当てるとしている。

両首脳は喫緊の課題としてインフレを挙げ、USMCAを活用しながら2国間の貿易を円滑化し、物流コストを下げていくことで合意した。また、メキシコは食料危機に対応するため、米国から最大で2万トンの粉乳と100万トンの硫酸アンモニウム肥料を購入する。

国境インフラについては、米国がインフラ投資雇用法に基づき26件の建設プロジェクトに34億ドルの拠出を決めている中、メキシコも2024年までに15億ドルの拠出を約束した。国境に関しては、フェンタニル(注1)や武器の流通、人身売買といった問題もあり、こうした越境犯罪への対応を強化するため、両国の法執行機関の協力を深めるとしている。中南米諸国から両国に流入する移民の問題については、6月に第9回米州首脳会議で採択された「移民と保護に関するロサンゼルス宣言」(注2)に基づき、国境警備を強化し人権保護にも配慮する(2022年6月14日記事参照)。また、両国は移民労働者の受け入れ・保護に関する作業部会および児童移民への対応に関する作業部会を立ち上げることで合意した。

気候変動対策については、特に石油ガス分野からのメタンの排出に取り組むことを約束し、グローバル・メタン・プレッジ(GMP、注3)を支援するために、メキシコ政府と同国の石油公社PEMEXが米国と協力し、メタン削減のための実施計画の策定および投資プロジェクトの特定を行うと明らかにした。7月8日に行われた米・メキシコ通商閣僚会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、米国からメキシコのエネルギー分野の投資環境や、農業関連のバイオ技術に関する許認可手続きについて懸念が表明されたが、今回の共同声明ではこれらへの言及はなかった。

(注1)合成オピオイドの一種で鎮痛剤として使用されるが、米国では過剰摂取による死者が増えており、社会問題になっている。

(注2)米州で連携して移民問題や人権保護に対処するとした宣言で、米国とメキシコを含む20カ国が連名で署名した。

(注3)世界のメタン排出を2030年までに、2020年比で少なくとも30%削減させるという国際的な枠組みで、現在は米国とメキシコを含む119カ国・地域が参画している(2021年9月21日記事参照)。GMPのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも参照。

(磯部真一)

(米国、メキシコ、カナダ)

ビジネス短信 43e5ab3dbab53fe2