米運輸省、運転席のない自動運転EVトラックの公道走行を初認可、スウェーデンのアインライドに

(米国、スウェーデン)

米州課

2022年07月05日

自動運転技術を開発するスウェーデン企業のアインライドは6月23日、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から、運転席のない自動運転電気自動車(EV)トラックを公道で運用する認可を取得したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社によると、NHTSAがこうした運用を認可するのは今回が初となる。

同社はこの認可取得により、中国家電大手ハイアール傘下の顧客であるGEアプライアンスの業務を支援するかたちで公道での実証実験を行い、将来の事業化に向けて自社開発の自動運転EVトラック「ポッド」を披露していく考えだ。ポッドの運転は原則としてシステムによって行われるが、人の介入が必要な場合は、オペレーターが遠隔で操作する設計になっており、今回の公道での実証実験は業界初の試みとなる。

同社のロバート・ファルク創業者兼最高経営責任者(CEO)は「ポッドは、これまで米国の道路では見られなかった新しいタイプの車両で、貨物業界の将来に向けた転換点として重要な意味を持つ。この車両の自動運転と電動化技術は輸送に革命を起こすだけでなく、何千もの雇用を創出し、米国の競争力維持に貢献すると確信している」と述べた。公道での実証実験は2022年第3四半期(7~9月)に実施される予定で、両社が実施中の既存事業を補完することになる。

コンサルティング会社のデロイトが2021年2月に公表した報告書によると、自動運転トラックは、人間が運転する現在の輸送方法と比較して1マイル(約1.6キロ)当たり30%以上のコスト削減を見込むことができる。人件費の削減や、走行時間と走行距離の向上、燃料効率の改善、優れた安全性能が要因としている。また、自動運転トラックは毎日休みなく稼働可能なため、生産性を大幅に向上でき、車両の数を増やさずに配送能力を強化できるというメリットもある。

カリフォルニア州では6月27日、米ウェイモやオーロラなどの34社がギャビン・ニューサム知事(民主党)に対し、自動運転トラックによる輸送を禁じる同州運輸省の規則を再考するよう連名で要請している(2022年7月1日記事参照)。また、ピート・ブティジェッジ運輸長官は5月3日の上院商業科学運輸委員会の公聴会で「自動運転車(AV)の開発と普及は運輸省の優先事項である一方、法的枠組みが整備されておらず、連邦議会の関与が必要」と述べ(2022年5月10日記事参照)、AVの普及に当たって法的課題が残されていることを示した。他方、連邦政府と連邦議会はともにAV開発の重要性を認識しており、今回のアインランドに対する公道での実証実験に向けた認可を通じて、技術開発を推進していきたいところだ。

(片岡一生)

(米国、スウェーデン)

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