米運輸長官、上院委公聴会で自動運転普及のための立法を議会に要請

(米国)

米州課

2022年05月10日

米国のピート・ブティジェッジ運輸長官は5月3日、上院商業科学運輸委員会の公聴会に出席外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、自動運転に関する質問に答えた。

トッド・ヤング議員(共和党、インディアナ州)が「米国には、自動車メーカーが自動運転を実験する機会がない」旨を述べたところ、ブティジェッジ長官は「自動運転車(AV)の開発および普及は運輸省の優先事項である一方、法的枠組みが整備されておらず、連邦議会の関与が必要」との認識を示した。また、同長官は「道路交通安全局(NHTSA)は、自動車メーカーに対して、2年を上限に最大2,500台について連邦自動車安全基準(FMVSS)の適用免除を認めることができる。われわれは免除申請に対する処理を迅速化し、開発や実験を後押ししたい」と語った。本公聴会が開かれる前の週の4月27日、民主党の上院議員12人がブティジェッジ長官宛てに、自動車運転に関する包括的な連邦レベルの法的枠組みを策定するよう働きかける書簡を送付していた(ロイター4月28日)。

NHTSAは2020年2月6日、AVの新興メーカーであるニューロに対して、初めてFMVSSの適用免除を認める判断を下した(2020年2月27日記事参照)。また、ゼネラルモーターズ(GM)系の自動運転技術開発会社であるGMクルーズがホンダと共同で開発しているAV「オリジン」について、2022年2月18日にFMVSSの適用免除を求める申請を行ったところ、NHTSAは翌月の3月10日に、ハンドルやブレーキを備えていないAVの公道走行許可などを含む、FMVSSの「乗員の衝突安全基準」に関する項目を修正し、対象に初めて「自動運転システム(ADS)を搭載した車両」を加えることを発表している(2022年3月22日記事参照)。

運輸省は連邦議会に対して、米国におけるAV開発を促進するための早期の立法を要請している一方、連邦議会は運輸省に法的枠組みの整備を求めており、行政府と立法府の間で主張の食い違いが垣間見える。他方、双方ともに当該取り組みの重要性を認識しており、連邦レベルで後押しすることで米国の競争力を高めたい考えだ。

ブティジェッジ長官は、ジョン・ヒッケンルーパー上院議員(民主党、コロラド州)から自動運転技術を維持・主導するための運輸省の施策について尋ねられた際も、「連邦政府と州政府の連携を円滑にし、現行法における適用免除と柔軟性を活用した上で、国の法的枠組みを最新化するために連邦議会とも協働していきたい」と述べた。

(片岡一生)

(米国)

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