中国の検閲措置により米国企業が利益を逸失、米国際貿易委員会報告書

(米国、中国)

米州課

2022年07月11日

米国国際貿易委員会(ITC)は77日、外国の検閲措置に関する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。報告書では、中国の検閲関連措置により、米国企業が数億人の中国国内の顧客に対してメディアやデジタルサービスを提供する機会が制限されることで、米国企業が多額の利益を逸失しているとの懸念を示した。

本報告書は、ITCが中国、ロシア、トルコ、ベトナム、インド、インドネシアの検閲政策と慣行が米国企業に与える影響についての調査結果(注1)を米国貿易通商代表部(USTR)や議会に報告するもの。ITCは、中国の検閲関連措置がとりわけソーシャルメディア・プラットフォーム、オーバー・ザ・トップ(OTT)通信サービス、インターネット検索サービス、および映画やゲームなど視聴覚コンテンツを提供する米国企業に影響を及ぼしていると結論付けた。

報告書では、米国のメディアおよびデジタルサービスを提供する米国企業の23.8%が検閲関連措置を経験したと答えているが、複数の目的で検閲が実施された場合などに、企業が検閲であることを認識できない可能性があるため、実際に検閲関連措置が実施されたよりも過小の回答となっている可能性があるとしている。また、72.3%が中国での事業への悪影響を懸念しているほか、72.0%が中国における検閲関連措置は、ここ数年で管理が難しくなっていると指摘している。さらには39.9%が、中国で製品やサービスを提供するためにも自己検閲を行わなければならないと回答しているほか、41.8%が検閲関連措置に伴う事業コストの増大や収益減少を経験しているとしている。

ニコラス・バーンズ駐中米国大使は76日、自身のツイッターを更新し、「中国の検閲当局は先週、香港とNATO首脳会議に関するホワイトハウスと米国務省の投稿をわれわれの微信(WeChat)と新浪微博(Weibo)(注2)から削除した。中国政府は、中国の指導者の発言を米国民が聞くように、米国の指導者の発言を中国国民が見ることができるようにするべき」と発信した。米国のジョー・バイデン大統領はNATO首脳会議で、「ロシアが欧州にもたらす直接的な脅威と、中国がルールに基づく世界秩序にもたらす体系的な課題の両方に対応するため、同盟諸国を結集する」「中国を含む挑戦からルールに基づく秩序を防衛する」と述べ、中国の貿易政策や慣行を非難していた。

バイデン政権が20225月に発足させたインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、インド太平洋地域で米国が中国に対抗するために経済的なコミットメントを示す役割が指摘される中で、キャサリン・タイUSTR代表は「デジタル貿易の国際ルール形成が急務」と発言しており(2022年6月7日記事参照)、米中つばぜり合いの最前線ともいえるデジタル分野での今後の動きが注目される。

(注1)中国でビジネスを行った米国企業を対象に実施。調査期間は201911日~2021725日。全体回答率は73.1%、回答社数は2,767社。

(注2)中国のソーシャルメディア・プラットフォーム。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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