輸出管理コンプライアンス制度を構築する留意点、弁護士に聞く

(中国)

中国北アジア課

2022年07月29日

中国政府は近年、国家安全保障などの観点から輸出を包括的に管理・規制する法整備(注1)を進めてきた。2020121日の「輸出管理法」施行を受け、商務部は2021428日に「両用品目輸出管理内部コンプライアンスガイドライン」を公布(注2)。企業に対して輸出管理にかかわる社内のコンプライアンス体制構築を推奨している。

ジェトロは728日、中国に進出する日系企業が同コンプライアンス体制を築く上のポイントや留意点などについて、北京市環球法律事務所の劉淑珺弁護士と鮑栄振弁護士に聞いた。主な内容は以下のとおり。

(問)中国現地法人の輸出管理内部コンプライアンス体制構築の進め方のポイントは。

(答)まず、自社の事業展開でどのような輸出管理上のリスクがあるかを正確に把握することが出発点となる。その上で「ガイドライン」を参照しながら体制構築を進めていく。

「ガイドライン」では、体制構築の9つの基本要素(ポリシーステートメントの作成、組織・機構の編成、全面的なリスク評価、審査手続きの確立、緊急対応策の策定、教育・研修の実施、コンプライアンス監査の完備化、資料・記録の保管、管理マニュアルの作成)を定めている。

このうち、組織・機構の編成と教育・研修の実施等については、既存の内部コンプライアンス体制を活用したり、これまでの経験を生かしたりすることが容易と思われる。

(問)企業にとって対応が難しい点は。

(答)全面的なリスク評価を行うための制度確立は特に難易度が高い。輸出する品目や輸出事業者の技術開発状況に対するリスク評価を行った上で、顧客や用途、取引に参加する第三者(提携先など)に対して全面的なリスク評価を行うことが求められる。リスク評価が難しい場合は、商務部など輸出管理機関に相談することもできる。

(問)制度を構築する上で注意すべき点は。

(答)日本の親会社が持つ既存の輸出管理内部コンプライアンス体制に準拠しつつも、中国子会社がそれを中国の法律の規定を踏まえて適宜調整し、中国向けの体制に作り替えることが求められる。また、輸出管理内部コンプライアンスやデータコンプライアンス上の観点から、リスク評価を行うために、関連データを日本の親会社に送ることは法律違反となるリスクがある点は注意が必要だ。つまり、リスク回避のため、リスク評価業務は全て中国国内で実施する必要があると考える。

(問)企業はどの程度まで対応を進めておくべきか。

(答)まず、輸出管理内部コンプライアンス体制の構築は、法令上の義務ではない。他方で「輸出管理法」では、内部コンプライアンス制度を確立し、適切な運用を行った場合には、関連管理品目の輸出について、包括許可などの便宜的措置を受けることができると定めている。また、2022422日に公表された「両用品目輸出管理条例」意見募集稿では、内部コンプライアンス制度の構築、適切な運用を行ったことで、違法行為による悪影響の拡大を防ぐことができた場合、その処罰が軽減される可能性があると定めている。この「適切な運用を行った」との判断は、関係主管機関の裁量に委ねられる部分が大きいため、「どの程度まで対応しておけばよいか」といった点は、一概に述べることはできないが、まずは「ガイドライン」に基づいてその9つの基本要素を盛り込んだ体制構築に取り組む必要がある。

両用品目の輸出では、知らず知らずのうちに法に触れる行為をする可能性もあるので、同条例の成立も見据えつつ、最低限の社内コンプライアンス体制を整備しておく必要があると考える。

なお、ジェトロは20225月に調査レポート「『両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築』に関する実務動向PDFファイル(363KB)」を公開。北京市環球法律事務所の協力を得て、体制構築に当たっての留意点や今後の見通しなどについて解説を行っている。

(注1)中国の輸出管理に関する法制度の詳細については、ジェトロのウェブサイト「特集:新たな局面を迎える安全保障貿易管理」から「専門家による政策解説【中国】」を参照。

(注2)「ガイドライン」は「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見」の付属文書として公布された。「ガイドライン」の詳細については、注1に記載の特集に掲載の「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要PDFファイル(416KB)」と同指導意見の「実務上のポイントPDFファイル(417KB)」を参照。

(片小田廣大)

(中国)

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