ドイツの「ギガビット戦略」、2030年までに全世帯に高速通信網を構築

(ドイツ)

ベルリン発

2022年07月22日

ドイツ連邦政府は713日、「ギガビット戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を閣議決定した(政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。デジタル化に必須の高速通信インフラの整備を図るため、全世帯を光ファイバー通信網に接続するとともに、国内全域に最新の移動通信網を構築することを主眼としている。2017年に発表された「5G戦略」では、第5世代移動通信システム(5G)通信網整備を2025年までに完了予定としていたが、基盤となる光ファイバー網の未整備が課題だった(2020年1月22日付地域・分析レポート参照)。今回の新たな戦略によって、ボトルネックといわれている通信インフラの設置や建設時の許認可が迅速化され、高速通信網の拡張が推進されると期待される。

同戦略では、実行スケジュールについては、第1段階では、2025年末までに光ファイバー通信網を3倍に拡張し、世帯および企業の50%が光ファイバー通信網に接続できるよう拡大するとしている。移動通信網は、可能であれば2026年までに国内全域で途切れない音声・データ通信を実現する。第2段階として、2030年までに全世帯を光ファイバー通信網に接続し、農村部などを含む国内全域で最新規格の移動通信網へ接続する。

また同戦略では、以下の具体的施策を提示している。

  • 許認可権限をもつ州政府に対して、2022年末までに、通信インフラ建設関連の認可手続きの簡素化のための法整備と、オンライン申請の導入を実施するよう要請。
  • 回線敷設・埋設などに新技術を活用した工法を導入して工事を加速できるよう、工事により発生した道路損傷などに対する賠償の在り方を検討する。
  • 「ギガビット土地台帳」を構築し、供給不足の地域、連邦政府または州が所有する不動産情報、既存インフラや敷設計画の情報を共有する。
  • 農村部など光ファイバー通信網の敷設で採算が取れない地域に、補助金を支給する。
  • 2023年から、鉄道の車両内における移動通信の品質向上を図る。

なお、ギガビット戦略は、移動体通信や光ファイバー関連事業者、デジタル関連の業界団体、州政府との議論を経て策定された。電気通信事業者は、2025年までに民間による光ファイバーの拡張工事に総額500億ユーロを投資するとしている。

ドイツ IT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)のアヒム・ベルク会長は同日、ギガビットネットワークの拡充迅速化には、まずは包括的かつ全国的に行政手続きを簡素化するための「連邦政府、州政府、地方自治体政府による協定が必要」と述べた。さらに、補助金の交付対象について、民間事業者の活動を阻害しないためにも、民間資金による拡張が不可能な地域への補助に限定すべきだと過剰な補助金支給を批判した。

(ヴェンケ・リンダート、中村容子)

(ドイツ)

ビジネス短信 2df07deec282c4c0