ASEAN主要国の知的財産の最新動向、専門家が解説

(ASEAN、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン)

知的財産課

2022年07月01日

特許庁とジェトロは6月10日、ASEANにおける最新の知的財産動向に関するセミナー「ASEAN知財動向報告会」を開催した。タイ、インドネシア、フィリピンなど国別の知的財産の権利化状況や、模倣対策の近況について説明した。ASEANでは国によって制度や運用状況が異なることから、各国横断的な情報へのニーズが高い。オンラインと対面形式のハイブリッドで行った同セミナーには300人を超える企業・団体が参加した。

セミナーでは、ジェトロのバンコク事務所、同シンガポール事務所のほか、東南アジアの模倣品対策や特許・意匠・商標出願にあたる調査などに精通した計10人の外部の専門家が講演した。各国における出願数や法整備状況など知財の最新情勢について、ジェトロはバンコク事務所の渡邉純也知的財産部長が、タイ知財局(DIP)が特許権利化期間短縮に向けた新しい取り組みとして2022年1月に「Tele Patentsサービス」を開始し、出願において審査官のアドバイスを受けられる、と紹介した。さらに、ラオスやカンボジアでは、日本で権利化された特許について同国でも実質的に無審査で早期登録される「特許の付与円滑化に関する協力(CPG)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの審査を活用すべきだ、と説明した。

また、法律事務所Tilleke & Gibbinsの大竹徳成氏(弁理士)は、2022年3月に、消費者が購入した模倣品に対するイメージについてタイで調査し(2022年度「タイにおける模倣品流通動向調査」PDFファイル(11.1MB))、「性能は低いが使用上は問題ないので模倣品を購入した」「本物は値段が高いので安く買えてよかった」など、全体の7割の消費者の回答が模倣品に肯定的だった、と述べた。

参加者との質疑応答では、現地での対策方法についての質問が数多く寄せられた。模倣品に肯定的な消費者が多い国でどのように対策を進めていけばよいかという質問には、各企業が模倣品を絶対に許さないという姿勢を、摘発やSNSを通じた啓発活動によって示していくことが肝要との回答があった。

今回のイベントは特許庁の委託事業として、主に日本に所在する企業向けに実施した。本セミナーで取り上げたテーマに関する調査報告書は、ジェトロのウェブサイトにおいて閲覧・ダウンロードが可能。なお、海外進出日系企業に関して、ジェトロは「東南アジア知財ネットワーク(SEAIPJ)」(注)を組織し、企業間の情報交換や知財当局との対話を支援している。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

(注)東南アジア主要国における日系企業の知財活動グループ間のネットワークとして、2012年3月に設置された。企業間の円滑な情報交換を促進するとともに、現地の知財当局の担当者を招き、模倣品の実効的な取締り方法や法整備について意見交換を実施。

(峯裕一朗)

(ASEAN、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン)

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