ドイツへのノルドストリーム1の天然ガス供給再開、ガス価格は高騰続く

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

ベルリン発

2022年07月25日

ドイツとロシアをつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」(NS1)経由の天然ガス供給が721日に再開された。定期点検のため711日から21日まで天然ガスの供給は停止され(2022年7月19日記事参照)、21日以降もロシアが供給を再開しないのではとの懸念が広がっていた。

ドイツ連邦ネットワーク庁によると、21日と22日のNS1の天然ガス供給量は最大容量の40%程度にとどまっている。これは定期点検直前の710日と同水準の供給量。同庁のクラウス・ミュラー長官はSNSで「(供給量はいまだ)60%不足しており、政治的な不確実性を考慮すると、予断を許さない状況」との見解を示した。天然ガス供給不足が続くことを考慮し、企業や一般消費者は、大幅な天然ガス価格上昇に備える必要があると、同庁は警告している。

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は21日、「ロシアのウクライナ侵攻により、ドイツはエネルギー危機に陥っている。技術的には、定期点検が完了すればNS1の供給量は通常時に戻せるはず。40%という供給量の少なさには政治的な意図があり、供給をあてにできないことを裏付けている」とロシアを批判した。

なお、ロシアからの天然ガス供給量の減少と価格高騰を背景に、ドイツ経済・気候保護省は「ガスに関する緊急計画」に基づき、レベル13のうちレベル2の「警報(alert)」を623日に発令している(2022年7月4日記事参照)。

天然ガス価格が高騰

連邦統計局は7月21日、天然ガスに関する各種統計を取りまとめ、発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。天然ガスの輸入価格指数(2015年=100)は5月に332.2ポイント、価格は前年同月比3.4倍に上昇。産業向け天然ガスの価格指数は6月に323.9ポイント、価格は前年同月比2.8倍となった。一方で、一般消費者向け天然ガスの価格指数は6月に159.7ポイント、価格は60.7%増にとどまり、輸入価格上昇分の一般消費者への価格転嫁はまだ十分に行われていない状況だ。

また、同局によると、ドイツでは産業部門と家庭部門のいずれも、エネルギー消費量に占める天然ガスの割合は依然として高い。天然ガスの総消費量は、産業部門では2020年時点でエネルギー全体の31.2%、家庭部門では2019年時点で41.2%を占めている。ただし、新築住宅で暖房に天然ガスを利用する割合は、201942%、202039%、202134.3%と減少傾向にある。

(中村容子)

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

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