米国における石油ガス産業の脱炭素への取り組み状況、ジェトロ報告書

(米国、日本)

ヒューストン発

2022年07月06日

ジェトロは75日、米国における石油ガス産業の脱炭素への取り組み状況をまとめた調査レポートを公表した。

世界的な気候変動対策、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まりを受け、米国の石油ガス企業を取り巻く環境は大きく変化してきた。1つには、各国における政府方針の大転換が挙げられる。米バイデン政権は、気候変動政策を政権の重要課題として位置付け、20211月の発足直後から、パリ協定への復帰、キーストーンXL石油パイプラインの建設承認取り下げを決定したほか、その後も連邦公有地および水域における石油ガス新規採掘リースの一時停止、自動車排ガス規制の再強化、化石燃料業界への補助金・税制優遇措置の見直し、メタンガス排出規則の提案など、一連の脱炭素化政策を推進してきた。

もう1つの変化は、銀行や保険、投資機関を含む金融業界が、石油ガス事業を気候変動対策の点から、リスクの高い投資先とみなすようになったことだ。石油ガスのほか電力会社などのエネルギー企業に対して、主要株主である機関投資家などは、脱炭素化を推進できる経営陣の起用や経営方針の転換を求めている。

こうした事業環境の変化を受けて、米石油ガス企業は短期および中長期の視点で温室効果ガスの排出目標を掲げるなど、多様な取り組みに着手している。シェブロンが202110月、エクソンモービルが20221月に2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げたのは象徴的な動きだ。さらに、削減する温室効果ガスの対象を供給網全体の排出量に拡大する動きがみられる。二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)や再生可能エネルギー、水素活用の分野では、石油ガス各社がコーポレートベンチャーを立ち上げ、スタートアップ企業と連携するなどの取り組みを進めている。このほか、電化、バイオ燃料など、脱炭素化に向けた多岐にわたる動きが加速化している。

本レポートでは、米国で事業を営む石油ガス大手、中核企業が掲げる脱炭素化に向けた目標や取り組みのほか、こうした活動の誘因ともなる政府の政策や金融業界の対応、日本企業の参画事例などをまとめた。

(桜内政大)

(米国、日本)

ビジネス短信 152f02c99a4eae00