カナダ政府、州や準州の電力網計画・運営を定めた「クリーン電力規定」案の枠組み公表

(カナダ)

米州課

2022年07月28日

カナダ政府は726日、州や準州が電力網を計画・運営する際の根拠を定めた「クリーン電力規定(Clean Electricity Regulations:CER)」案の枠組み外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。連邦環境・気候変動省のニュースリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、817日までパブリックコメントを募集する。

CERは、州や準州が電力網を計画・運営するための明確な根拠を提供することで経済の競争力を支えるとともに、カナダ国民に信頼できる電力を安定供給し、家庭や企業の費用負担を手頃な水準に維持することを目的として、カナダ政府が現在策定を進めているものだ。連邦政府は、CERの策定を州・準州、先住民パートナー、電力会社、産業界、学術機関、非政府組織など、カナダ国内の利害関係者らと協力して進めており、今回の文書は2022年3月に発表されたディスカッションペーパー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに続く2番目の関連文書となる。同ディスカッションペーパー発表時は、「クリーン電力基準(Clean Electricity StandardCES)」の名称だった策定対象の内容について、今回の文書では「クリーン電力規定(CER)」の名称に改められている。

政府によると、本CERは、以下3つの基本原則に基づいて策定されている。

  • 2035年までに電力網からの温室効果ガス(GHG)の排出量が正味ゼロとなるよう、温室効果ガスの削減を最大化すること
  • 電力網の信頼性を確保し、強力な経済を支えるとともに、夏季の冷房、冬季の暖房を支える安全な電力へのアクセスを確保し、カナダ国民の安全を保障すること
  • 住宅所有者や企業にとって、電力を購入しやすい環境を維持すること

CER案の枠組みによると、CERにおいては、規制対象のユニットの排出量が一定期間にわたり適用基準を超えた場合、操業が禁止される。排出量が適用基準を下回る場合は、オフセット購入などの財務コンプライアンス要件の対象となる。基準達成の方法については、例えば、化石燃料と二酸化炭素(CO2)非排出燃料の同時燃焼、水素などのCO2非排出への完全な切り替え、操業停止や排出削減技術の導入など様々なアプローチが可能で、規制は、どのアプローチをとるべきかについて規定するものではないとしている。

CER203511日から発効となるが、導入は段階的に行われ、CERの発効日より前に建設された新規の天然ガス燃焼施設は、2035年以降も短期間に限り稼働が認められる。また、緊急事態の場合は、CO2削減策を実施していない天然ガス燃焼施設からの排出も許容される。所定の操業予定期間が終了した既存施設についても、年間の放出量および稼働時間が規定以下であれば(具体的数値は今後検討)、再生可能エネルギー由来電力のバックアップ目的での発電を継続することができるとしている。

ニュースリリースによると、カナダの電力網は80%以上が温室効果ガスを排出しないエネルギー源によるもので、2035年までにネットゼロの電力網を達成するのに有利な状況にあるという。CERは、風力、太陽光、小型原子炉などの温室効果ガス非排出型電源の導入を促進しつつ、長期的な規制の確実性を提供するのに役立つほか、水力発電施設の多い州や準州からの接続を奨励し、水素、蓄電池、炭素回収・貯留の利用を促進するとしており、カナダにおける需要サイドのマネジメントや分散型エネルギーの利用を促進することにもつながるという。

スティーブン・ギルボ環境・気候変動相は「カナダ国民の大多数は、すでに日常生活の電力をクリーンで信頼のおける電力に頼っている。石炭使用の段階的廃止が進んだおかげで、カナダが2035年までにネットゼロの電力網を整備し、気候変動対策の次なるステップを踏み出すための準備が整った。これは、健全な環境と健全な経済を目指すわが国政府の計画のカギとなる重要な部分だ」と述べている。

(高山さわ)

(カナダ)

ビジネス短信 02a427cad16ae5ba