ウクライナ情勢の影響調査、ブラジル企業の半数以上が「原材料調達コストが上昇」と回答

(ブラジル、ウクライナ、ロシア)

サンパウロ発

2022年06月15日

ブラジル全国工業連盟(CNI)は6月1日、特別調査第84号「原材料不足とウクライナでの戦争(ESCASSEZ DE INSUMOS E A GUERRA NA UCRÂNIA)」を公開した。調査時期は4月1日から12日。回答企業数は2,216社。

「事前に予測した原材料の調達コストと比較した現状」との問いに対し、「国内での原材料の調達コストが予想より上昇した」と回答した企業の割合は、鉱業と製造業に分類される企業(1,814社)のうち71%、建設業に分類される企業(402社)のうち73%だった。製造業の企業の中で、国内での原材料価格が上昇した品目は「ゴム製品」との回答が86%、「バイオ燃料」が83%、「冶金(やきん)」が80%、「輸送機器(自動車など)」が80%だった。

「輸入による原材料の調達コストが予想より上昇した」と回答した企業の割合は、鉱業と製造業に分類される企業(1,814社のうち輸入に関わる企業のみ)のうち58%、建設業に分類される企業(402社のうち輸入に関わる企業のみ)のうち68%だった。製造業の企業の中で、具体的に輸入による原材料の価格が上昇した品目は「バイオ燃料」との回答が100%、「ゴム製品」が94%と上位だった(注1)。

原材料の調達コストが国内調達と輸入の双方で上昇した「バイオ燃料」について、サンパウロ大学農学部(ESALQ)の応用経済研究所(CEPEA)は3月7日、同日付の公式発表で「ロシア・ウクライナ間の紛争で、ウクライナからのヒマワリ油の輸出量が減少したことなどを受け、代替となる大豆油の価格が上昇した」と説明した。また「石油価格が上昇することは、大豆油を原料とするバイオディーゼルへの需要を喚起することになり、国内のバイオディーゼル価格が上昇する」と分析している(注2)。

「ゴム製品」については、ブラジルゴム技術協会(ABTB)が3月11日付公式サイトで、タイヤの強度を高めるカーボンブラックの原料供給地であるロシアで物流やサプライチェーンに関わる企業がオペレーションを停止したことで「原料供給が難しくなりかねない」との懸念を示していた。

CNIのマリオ・セルジオ・テレス経済部長は「ウクライナ・ロシア間の紛争や、ロシアへの経済制裁措置などで、サプライチェーンの問題が顕著となった。国際的な物流網に障害が生じたほか、原材料やエネルギー供給そのものもネックとなり、原材料入手の遅れや価格の上昇につながっている」と説明している(6月1日付CNI公式サイト)。

(注1)国内での原材料価格については全ての企業(2,216社)が回答し、輸入による原材料価格については「原材料の輸入に関わる」企業(詳細な企業数は公開されていない)のみが回答。

(注2)サンパウロ大学農学部(ESALQ)の応用経済研究所(CEPEA)は大豆油の価格上昇について、ウクライナからのヒマワリ油の輸出量減少に加えて、インドネシアでのパーム油の不足も1つの要因と述べている。

(古木勇生)

(ブラジル、ウクライナ、ロシア)

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