5月の消費者物価指数、前年同月比7.9%上昇、食品価格はさらに上昇との予測も

(ドイツ、EU)

ベルリン発

2022年06月07日

「新型コロナ禍」やロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響を受け、ドイツの消費者物価指数は上昇しつづけており、食品価格についてもさらなる上昇が予測されている。

ドイツ連邦統計局は5月30日、5月の消費者物価指数(CPI、速報値)が前年同月比7.9%上昇したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。1973年の第一次石油危機以来の上げ幅を記録した。4月の7.4%から上昇率が0.5ポイント拡大し、前月比では0.9%の上昇となった。エネルギー価格の上昇率は前月の前年同月比35.3%から38.3%に、食品も前月の8.6%から11.1%に拡大した。連邦統計局は、上昇の要因を、経済活動の川上における顕著な価格上昇が、川下の消費者物価に波及したためと説明した。また、新型コロナ禍の影響によるサプライチェーンの混乱も物価上昇の要因となったとした。

食品小売価格はさらに上昇との予測

食品小売価格はさらに上昇するとの見方がある。ドイツ取引信用保険のアリアンツ・トレードは5月30日、欧州における食品小売価格に関する調査結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同社シニアエコノミストのオーレリアン・デュトワ氏は、「現状の食品小売価格には、過去18カ月間(2020年10月~2022年4月)の生産者価格の上昇分が反映されているといえず、最悪の事態はまだ家計に及んでいない」と指摘。ユーロ圏では2021年初頭から農業生産品など原材料価格が上昇。ウクライナ軍事侵攻の影響も加わり、ドイツでは食品の生産者価格は16.6%上昇した一方で、小売価格の上げ幅は6.6%にとどまっているという。生産者価格の上昇幅に対して、消費者への価格転嫁はいまだ半分以下に抑制されている状態だ。同調査では、食品小売業者がこれまでの生産者価格上昇分の約75%を消費者に転嫁するとの仮定のもと、食品小売価格の上昇率を試算した。その結果、ドイツの食品小売価格は2022年に10.7%上昇、一人当たりの食費に換算すると年間平均で前年より254ユーロの支出増になると予測している。また、欧州の食品小売価格の上昇率は、EUでは9.4%、一人当たりの食費は年間243ユーロの支出増と試算しており、ドイツの上昇率はEU域内でも最高水準に達すると予測した。

(中村容子)

(ドイツ、EU)

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