2022年のエネルギー投資は前年比8%増、IEA予測

(世界、中国、ロシア)

国際経済課

2022年06月23日

国際エネルギー機関(IEA)は6月22日に発表した世界エネルギー投資報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2022年の世界のエネルギー投資は前年比8%増の2兆4,000億ドル、そのうち電力分野への投資は5.6%増の9,800億ドルと予測した。

クリーンエネルギー(注1)への投資は2022年には1兆4,400億ドルとなる見通し。パリ協定の採択(2015年)以降5年間は、前年比2%程度(年平均)の伸びにとどまっていたが、2020年以降は同12%にまで急増している。国・地域別では、全体の半分を先進国、3割を中国が占め、両割合の合計は年々拡大している。

一方、石炭火力発電への投資額(2021年)はアジア新興国が牽引するかたちで、前年比10%増の1,050億ドルとなり、2022年はさらに10%増と見通している。中国などで脱炭素の政策が進む半面、短期的に国内のエネルギー需要が急速に増加しており、同需要に対応した投資増だ。IEAは報告書の中で、石炭火力発電への投資の増加を「Warning Sign」(警告すべき兆候)として警鐘を鳴らしている。

液化天然ガス(LNG)向けの投資も拡大している。ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁により、ロシアのLNG輸出が急激に落ち込んだ。ロシアからのLNG輸入国が輸入先を分散させたことにより、輸入先国の新規のLNGインフラ投資が増加したことによる。2022年の天然ガスと石油への投資は前年比10%増が見込まれる。

クリーンエネルギー技術に欠かせない重要資源・金属(注2)は、需要増とサプライチェーン分断による供給不足により、2021年初めから価格が上昇。リチウムやコバルトの価格は2021年に倍増し、銅やニッケル、アルミニウムは同25~40%増となった。2022年1~3月にはリチウムがさらに2.5倍以上、ロシアが主な供給元のニッケルやアルミニウムも、ウクライナ侵攻後、価格上昇傾向が続く。

再生可能エネルギーの発電コストは近年減少傾向だったものの、重要鉱物の価格上昇に伴い、太陽光モジュールや風力発電タービンの価格(2021年)はそれぞれ前年比16%、9%増となった。

IEAのファティ・ビロル事務局長は同報告の発表で「われわれは世界的なエネルギー危機と気候危機の双方に直面している。クリーンエネルギーへの移行を加速化させるため、同投資の急拡大が唯一の永続的な解決方法だ」と述べた。

(注1)再生可能エネルギー、送電網(グリッド)と蓄電、エネルギー効率化、その他電力消費、低炭素燃料と二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)、電気自動車(EV)で構成する。再生可能エネルギー、送電網と蓄電の2つで電力分野への投資の8割超を占める。

(注2)2022年は初めて、同報告の中で、レアメタルを扱っている。

(古川祐)

(世界、中国、ロシア)

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