米運輸省、自動化に伴う衝突事故レポートを公表

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月20日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は6月15日、自動運転支援システム(ADAS)や自動運転システム(ADS)の作動中に発生した衝突事故に関する全米初の報告書を発表した。新車へのADASの搭載や、配送用商用車などでの無人によるADSの利用などが増える中で(2022年6月7日記事参照)、NHTSAは走行車両からのデータを分析し、自動化に伴うリスクを適切に特定することで、道路の安全性向上やシステムの性能基準、規制の策定を視野に入れた取り組みを進める。

今回の報告書は、トヨタやゼネラルモーターズ(GM)をはじめとする自動車メーカーのほか、ソフトウエアメーカーや、グーグル傘下のウェイモ、アップルといった技術開発企業などを含む100以上の機関がNHTSAの要請(注1)に基づいて提出したデータを基に作成したもの。調査期間は2021年6月29日から2022年5月15日までの約1年間。自動ブレーキや車線逸脱防止などADASを搭載するレベル2と、ADSにより人の操作なしで走行が可能なレベル3~5(注2)の車両で、いずれも衝突の30秒以内にシステムが作動している中で発生した衝突事故を調査対象とした。

調査結果によると、レベル2の衝突件数は392件で、そのうち273件がテスラ車に関連したものだった。傷害の重症度に関しては、不明が294件、死亡が6件報告された。レベル3~5に関しては、衝突件数が130件で、メーカー別内訳ではウェイモが64件で最多。108件で負傷者は報告されておらず、死亡事故はゼロだった。地域別では、いずれもカリフォルニア州での発生件数が最も多く、事故情報源としては、車両に搭載された通信システム(総称:テレマティクス)を通したものが多いことがなどが分かった。

全米の自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会(AAI)は「実世界のデータに基づき、システムの安全性能の透明性と認識を高めるという目標を強く支持する」と述べ、前例のないNHTSAの取り組みを評価。一方で、メーカーごとの走行台数や距離などのデータが不完全など課題も多く、NHTSAのスティーブン・クリフ局長も「安全性に関する結論を見いだすには十分ではない」と発言している(オートモーティブニュース、2022年6月15日)。AAIは「NHTSAと一般市民がこれらのシステムの安全性能を正確に評価できるようにデータを公開することも非常に重要だ」と述べ、業界の協力を提起した。

(注1)NHTSAは2021年6月、「一般命令(Standing General Order)」により自動車メーカーなど100社以上に自動運転機能により発生した事故データなどの提出を要請していた。

(注2)モビリティー専門家による米国の非営利団体SAEインターナショナルが定めた自動化のレベル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく。

(大原典子)

(米国)

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