米国とオランダ、紅海の浮体式石油貯蔵積出設備「セイファー」の危機回避へ共同声明

(米国、オランダ)

ヒューストン発

2022年06月02日

米国務省は5月27日、紅海のイエメン沖合に係留されている浮体式石油貯蔵積出設備「セイファー」の経済、環境、人道上の脅威に関して、米国とオランダの両政府による共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。国連が進める取り組みを支援するため、他国に広く協力を呼び掛けている。

国際海事機関(IMO)によると、セイファーはイエメン沖から約4.8カイリ(約8.9キロ)にあり、1976年に超大型原油タンカー(ULCC)として日本で建造された後、1986年に浮体式石油貯蔵積出設備(FSO)に改造された。現在はイエメンの企業が保有している。イエメンでの紛争が続いているため、セイファーに関連する全ての生産および輸出作業は停止しているが、推定約110万バレルの原油が内部に残っているという。これは、状況は大きく異なるものの、1989年に起きたエクソン・バルディーズ号による原油流出事故(注)の4倍の流出量に相当する。セイファーは2015年以降、点検や保守が行われておらず、その健全性に重大な懸念がある。現在、セイファーからの油漏れはないものの、セイファーの構造、機器、操業システムの劣化が進んでいるため、流出のリスクは高まっているとされている。

共同声明では、セイファーが地域全体にもたらす差し迫った危険に対する認識を高めることが必要で、民間企業を含む国際社会は、こうした脅威に対処するために、今すぐ行動を起こす必要があるとしている。

さらには、セイファーから臨時船に油を積み下ろす緊急作戦への経費である8,000万ドルを含め、国連が主導する作戦計画として総額1億4,400万ドルに上る資金調達の重要性を強調している。現状では緊急活動に必要な資金の半分近くが集まったが、さらなる資金が必要、としている。なお、10月になると、強風と不安定な海流によって、国連による活動はより危険なものとなり、セイファーが破損する危険性が高まるという。油が流出した場合、清掃だけで200億ドルの費用がかかるとされている。

(注)米国エクソンの所有する原油タンカーが、1989年にアラスカ沖で座礁し、約24万バレルの原油が流出した。米国史上最大の原油流出事故とされる。

(沖本憲司)

(米国、オランダ)

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