5月の米消費者物価、前年同月比8.6%上昇で伸び再加速、コア指数は6.0%で鈍化

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月13日

米国労働省が6月10日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、前年同月比8.6%上昇し、3月につけた8.5%を上回り、1981年12月の8.9%に次ぐ40年5カ月ぶりの高い伸びとなった。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同6.0%上昇で、前月の6.2%から減速した。民間予想はそれぞれ8.3%、5.9%だった。前月比ではCPIは1.0%上昇、コア指数は0.6%上昇だった(民間予想はそれぞれ0.7%、0.5%、添付資料図参照)。

品目別に前年同月比で見ると、食料品が10.1%上昇(前月:9.4%上昇)とさらに伸びが加速、特に家庭用食品が11.9%上昇(10.8%上昇)と伸びが高い。ガソリンは48.7%上昇(43.6%上昇)と前月から一転して伸びが加速し、前月比でも4.1%上昇と、前月の6.1%低下から反転している。財は8.5%上昇と前月(9.7%上昇)より伸びが鈍化した。うち中古車については、16.1%上昇と前年同月比の伸びは鈍化したが、前月比では1.8%上昇と前月の0.4%低下から反転し、新車も前年同月比で12.6%上昇、前月比でも1.0%上昇と伸びが高い。サービスは5.2%上昇と伸びが加速し、物価全体の3割程度のウエートを占める住居費が5.5%(前月5.1%上昇)と引き続き伸びが加速している。航空運賃は37.8%上昇で、エネルギー高や旅行需要増などの影響で、前月に引き続き大きく伸びた(添付資料表参照)。

4月のCPIの伸びが鈍化したことから、5月も伸び鈍化が期待されていたが、6月2日に決定されたOPEC加盟国とロシアなど非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」の増産規模が小さかったことから、原油価格が再び上昇(2022年6月3日記事参照)、食料油や肥料などの食品供給シェアの高いウクライナやロシアからの供給懸念により、世界的に食料価格が上昇しており(2022年6月7日記事参照)、今回はこの影響を大きく受けたかたちだ。特に、ガソリン価格は休暇シーズンを前にした観光需要の高まりから連日過去最高を更新し、6月12日時点で全米平均価格は1ガロン(約3.8リットル)5ドルを超えており、ウクライナ情勢の長期化が見込まれる中では、食料品とガソリン高の影響緩和がなかなか見込めないのが現状だ。一方で、財価格はここのところ鈍化しており、小売り各社はこれまで積み増し過ぎた在庫調整に追われるなど、一部では需要鈍化の兆しもある。連邦準備制度理事会(FRB)によると、4月の消費者信用残高は前月比10.1%増(年率)、特に、クレジットカードなどのリボルビング払いは19.6%増と、最近になって急増しており、これまでの堅調な消費の源泉となっていた貯蓄が少なくなってきている兆しが見られる。6月14~15日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるが、6月と7月のFOMCでは0.5ポイントの政策金利引き上げを前回会合で事実上表明しており(2022年5月6日記事参照)、焦点は9月のFOMCでの対応だ。弱さも見え始める実体経済にどこまでインフレ対応を今後優先するか、次回FOMCでのジェローム・パウエルFRB議長の発言に注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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