米ウォルマート、今後3年間で次世代型フルフィルメントセンターを4州に開設へ
(米国、カナダ、オーストリア)
ニューヨーク発
2022年06月07日
米国小売り大手ウォルマートは6月3日、今後3年間で米国内4州4カ所に次世代型配送拠点(フルフィルメントセンター、以下FC)を新設すると発表した。1拠点目を2022年夏に米国中西部のイリノイ州ジョリエットに開設した後、インディアナ州、テネシー州、ペンシルベニア州の各州にも展開する。
発表によると、新たに開設する次世代型FCでは、オーストリアに本社を置く、物流システムの開発を手掛けるナップ(Knapp)と提携の上、機械学習やロボットなど最新技術を活用して自動化をより高い水準で導入。荷受けから発送まで、従来12段階あった作業手順を5段階に合理化することが可能になる。これにより、新たに開設する次世代型FCだけでも、米国の人口の75%に商品を翌日または翌々日配送で提供することが可能になり、これに同社の既存のFCを合わせると、米国の人口の95%に2日以内の配送を提供できるようになるとしている。同社は、米国内において4,700カ所の倉庫と210カ所の配送拠点という巨大なネットワークを有しており、今後加わる新たなFCがウォルマートの物流網をさらに強化するとみられる。
アマゾンが2005年に「アマゾン・プライム」のプログラムを立ち上げ、プライム会員向けに注文から翌々日以内の無料配送を含むサービスを米国で開始して以来、物流におけるラストワンマイルを縮めてサービスを強化する動きは活発化している。新型コロナ禍で消費者の購買行動がオンラインへ移行したことで、迅速な配送サービスを求める消費者の期待はさらに高まっており、米国物流大手UPSの子会社であるウェアツゴー(Ware2Go)が公表した消費者調査(注)では、42%の回答者が、オンラインで注文する際に2日以内の配送をオプションとして選択できることを求めており、33%はパンデミック前よりもスピード配送に高い期待を寄せている。
直近2022年5月には、カナダに本社を置く電子商取引(EC)サイトを構築するショッピファイが、米国カリフォルニア州の配送スタートアップ、デリバー(Deliverr)を21億ドルで買収している。同社はこれまで、第三者の配送サービスを活用してネットワーク構築に取り組んできたが、より大規模かつ戦略的に配置された物流拠点を特徴とする統合的なネットワークの構築に焦点を当てている。同社は、2024年までに米国の主要都市における配送拠点に約10億ドルを投じることにより、米国の人口の90%以上に注文から2日以内の配送を提供するとしており、国内におけるスピード配送の競争激化が進んでいる。
(注)調査は2021年5月に、米国の18歳から75歳以上の消費者1,000人以上を対象に、ウェアツゴーの委託を受けた米国調査会社プロペラーインサイトが実施。
(樫葉さくら)
(米国、カナダ、オーストリア)
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