トヨタとデトロイト3、米議会にEV税控除の上限撤廃を要請

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月15日

自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス、北米トヨタは6月13日、電気自動車(EV)を購入する際に消費者に与えられる税額控除に関し、メーカーに課されている累積販売台数の上限撤廃を求める共同書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を米国議会に提出した。当該4社は書簡の中で、「われわれは、電動車両の開発、生産および販売を強化するために、EVバッテリーと車両製造に対する200億ドル超の短期投資を含め、2030年までに米国における1,700億ドル以上の投資を約束している」として生産者の努力を強調した上で、「最近の経済的圧力とサプライチェーンの制約によりEVの製造コストが上昇する中、税額控除は消費者のEV購入を加速させる価値ある支援だ」と政府の取り組みを要請した。

EVの税額控除制度は、2009年にオバマ政権(当時)の下で、米国再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act)に基づき制定されたもので、消費者は連邦税の還付申請を通じて、バッテリーの性能に応じ1台当たり2,500ドルから7,500ドルの控除を受けられる。税額控除は事実上、消費者にとってキャッシュバックと同様の効果を得られるため、EV購入の大きなインセンティブとなってきたが、メーカー当たりの控除対象車両が累積販売台数で20万台に限定されているため、既存のEVメーカーにとって不利な制度となっている(2018年11月26日記事参照)。GMとテスラは既に上限に達しており、トヨタも2022年末に控除対象外になることが予想されていることから、早期の撤廃が求められている(オートモーティブニュース6月13日)。

なお、今回の書簡では触れられていないが、EV税額控除に関しては、ビルド・バック・ベター法案に盛り込まれた、控除額の上乗せ(2021年9月16記事参照、注)も議論の対象となっている。上乗せに関して、与野党勢力が拮抗(きっこう)する上院でジョー・マンチン議員(民主党)が反対しており、先行きは不透明なままだ(2021年12月23日記事参照)。マンチン議員は、EV需要が高まり生産が追い付かない中での控除額の上乗せは「絶対的にばかげている」とし、代わりに運輸部門の脱炭素化に向け、水素の開発により多くの資金を費やすべきとの見解を示している(ブルームバーグ4月28日)

(注)現行の7,500ドルに加え、労働組合を持つ拠点で組み立てられた車両の購入に対して4,500ドル、組み立て工程において構成部品の50%以上が国内生産品かつ、動力として搭載されるバッテリーセルの組み立てが国内で行われている場合にはさらに500ドルが上乗せされるなど、組合を有する米系メーカーにとって有利な内容となっており、日系メーカーなどからは反対の声が上がっている。

(大原典子)

(米国)

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