シンガポールが鶏肉の調達代替先を確保、マレーシアの輸出禁止措置で

(シンガポール)

シンガポール発

2022年06月07日

シンガポール国内で鶏肉の調達や価格への影響が広がっている。輸入する鶏肉の約3分の1を供給するマレーシアが、このほど輸出停止に踏み切ったためだ。これに対し、デスモンド・タン国務相(内務・環境持続担当)は6月4日、自身のフェイスブックで、国内の鶏肉供給は安定しており、オーストラリアやタイなどから新たな鶏肉が到着する予定だと明らかにした。マレーシアは6月1日から、月間360万羽分の食用鶏肉の輸出を停止している(2022年5月27日記事参照)。

シンガポール食品庁(SFA)によると、同国は2021年に21万4,400トンの鶏肉を輸入した。このうち、ブラジルからの輸入が48%と最大で、次いでマレーシアからの輸入が34%を占める。タン国務相は向こう数週間で、オーストラリアとタイから鶏のチルド肉をさらに調達するほか、ブラジルと米国から冷凍鶏肉の輸入が増える見通しを示した。

同国は現在、国内で消費する食品の9割以上を輸入に依存している。SFAは近年、食糧安全保障対策の一環として、国内の自給率の引き上げを図ると同時に、食品調達先の多角化を進めている(2022年4月11日記事参照)。

鶏肉の価格上昇が加速へ

一方、同国での鶏肉の販売価格は上昇基調にある。統計局によると、丸鶏の平均販売価格は2022年1月に1キロ当たり6.50シンガポール・ドル(約618円、Sドル、1Sドル=約95円)だったのが、4月に7.21Sドルへと10.9%上昇した。今回のマレーシアの禁輸措置を受け、鶏肉の店頭販売価格は上昇圧力がさらに高まっている。

リー・シェンロン首相は5月22日、一部の国が食品の禁輸措置に踏み切っている背景について、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて食糧のサプライチェーンが混乱し、インフレ率が上昇していると指摘していた。リー首相は対応策として、「これまでわれわれが数年にわたり行ってきているように、備蓄を増やし、調達先を多角化している」と説明。「1カ国から鶏肉を購入できなければ、他の国々から購入可能だ」と述べた。その上で、「今回(の禁輸措置)は鶏肉だが、次は別の食品が対象になる可能性もあり、そうした事態に備える必要がある」と強調した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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