米USTR、メキシコ自動車工場での労働権侵害の疑いでメキシコ政府に確認要請

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2022年06月08日

米国通商代表部(USTR)は6月6日、メキシコ北部コアウイラ州フロンテラ市にある自動車部品メーカー、テクシド・イエロ(Teksid Hierro)のフロンテラ工場で労働権侵害の疑いがあるとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

RRMは事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きはUSMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。加盟国政府がそのような提訴を受け取った場合は、労働権侵害が疑われる事業所が所在する加盟国の政府に対し、事実確認を要請するか30日以内に判断する。今回の件は、米国の全米自動車労働組合(UAW)、全米労働総同盟・産業別組合(AFL-CIO)とメキシコ全国鉱夫・冶金・鉄鋼労働組合(SNTMMSSRM)が、テクシド・イエロのフロンテラ工場で団結の自由と団体交渉にかかる労働権が侵害されたとして、米政府に提訴したことが発端だ。

USMCAに基づくと、事実確認の要請を受けたメキシコ政府は調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に調査を完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は問題となっているメキシコの事業所からの製品輸入について、両国間で労働権侵害が解消されたことに合意するまで、最終的な税関での精算を留保することができる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、テクシド・イエロのフロンテラ工場からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

USTRは2020年7月にUSMCAが発効して以降、RRMによる手続きを3回発動している。いずれもメキシコ内の自動車関連工場の案件だが、最初の2件は外部専門家で構成するパネルを設置する前に事案は解決している(2021年8月12日記事2021年9月24日記事参照)。3件目は5月中旬に米政府からメキシコ政府に確認要請がなされた案件となる(2022年5月23日記事参照)。メキシコ政府はその直後に米政府の要請を受領したことを発表しており、現在、事実関係などを検証している状況だ(2022年5月24日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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