米フリーポートLNGで火災、天然ガス供給に懸念広がる

(米国、日本、EU)

ヒューストン発

2022年06月13日

米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)製造施設のフリーポートLNGで6月8日、火災事故が発生したと複数の米国メディアが報じた。フリーポートLNGを運営するフリーポートLNGデベロップメント(FLNG、本社:テキサス州ヒューストン)広報担当者は翌9日、メディアの取材に対し、少なくとも3週間操業を停止すると回答した。

各国がロシア産エネルギーへの依存度低減を進め、非ロシア産エネルギーの調達競争が激化する中、米国の輸出はここ数カ月で大きく伸びている。米国の2022年1~5月の実績をみると、世界最大のLNG輸出国で、中でもLNGの輸出ターミナルは米国のLNG輸出の20%を担う米国最大級の施設の1つとなっている(オイル・プライス6月8日)。

米国最大級のLNG輸出ターミナルであるフリーポートLNGの操業を停止することで、需要逼迫に伴うLNGの価格高騰に拍車がかかる恐れがある。米国調査会社ラピダン・エナジーのグローバルガス・LNGディレクター、アレックス・マントン氏はロイター通信の取材に対して「米国の主要施設における重大な生産停止だ」「3週間の操業停止により市場は少なくとも100万トンのLNGを失う。スポットでのLNG取引競争は、世界のLNG価格を上昇させるだろう」と指摘する(ロイター6月9日)。

憂慮されるのが欧州への影響だ。2021年に輸入した天然ガスの45%をロシア産が占めるEUでは5月18日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてエネルギー安全保障の観点から、2030年までにロシア産化石燃料からの脱却を目指す「リパワーEU」を打ち出している(2022年5月20日記事参照)。また、米国とEUは米国産LNGのEUへの供給大幅増に合意していた(2022年3月28日記事参照)。実際に、LNG供給不足への懸念から、欧州の指標となるオランダのガス先物価格は6月9日、一時約13%高騰した(ブルームバーグ6月9日)。

日本も無関係ではない。経済産業省の発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、発電用LNGの在庫は6月5日時点で214万トンと、2017~2021年の5月末平均の198万トン、6月末平均の195万トンを上回っており、英国のエネルギー関係情報配信のS&Pグローバル・プラッツによると、市場関係者の話として「国内需要に直ちに影響は与えないが、操業停止が続くと7月以降に大きな影響が出る」と指摘し、操業停止が長引けば、夏の電力需要ピークシーズンに向けて電力会社がLNGを備蓄している日本への影響が懸念されると報じている。

(沖本憲司、葛西泰介)

(米国、日本、EU)

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