原子力発電を支えるオラノ

(フランス)

パリ発

2022年06月16日

原子力発電は、カーボンニュートラル達成のために重要な役割を果たすのみならず、ロシアによるウクライナ侵攻によって喫緊の課題となったエネルギー安全保障の強化の観点からも、その必要性が議論されている。ジェトロは5月30日および31日、ウランの採掘から核燃料サイクルまで幅広い原子力関連事業に携わるオラノ(注1)の原子力発電の燃料を供給する施設を日本企業・団体とともに訪問し、同社からその概要を聞いた。

訪問したのは、南フランスのアビニョン近郊のマルクール地区メロックスのMOX(モックス)燃料(注2)生成加工施設外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ならびにトリカスタン地区外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのウランの転換・濃縮を行っているフィリップ・コスト転換施設(CX II)およびジョルジュ・ベスII濃縮施設(GB II)の2地区3施設。

メロックス施設は1995年稼働。800人の直接雇用、500人の間接雇用(メンテナンスなど)を創出。同社のフランス北西部ラアーグ再処理施設で抽出したプルトニウムを同施設に移送しウランと混合。混合した粉末をペレット化、焼結(1,500度、24時間)、研削(サイズ調整)、燃料棒加工(金属性筒状棒に金属ペレットを封入)、燃料集合体組立の工程を経てMOX燃料が生産される。この間、125点以上の厳格な検査が行われて完成する。かつてはドイツ、スウェーデン、スイス、ベルギー、米国向けにも出荷実績があるが、現在はフランス国内以外ではオランダ、日本向けのみ。

同社は、トリカスタン地区で2,500人の直接雇用、2,000人の間接雇用を創出。CXⅡは2018年稼働、同社の南フランスの別施設(マルベシ)でウランを四フッ化ウランに1次加工した後、同施設の地上6階ほどの巨大な反応炉でフッ素と反応させ六フッ化ウラン(UF6)に転換。GB IIはノースとサウスの2ユニットがあり、それぞれ2011年、2013年に稼働し、遠心分離機によりUF6を最大6%濃縮している。磁気利用の遠心分離機はメンテナンスなどの停止などなく10年間以上稼働を継続中で、今後10年間の継続を想定しているという。

写真 メロックス施設を訪問した日本企業・団体一行(オラノ提供)

メロックス施設を訪問した日本企業・団体一行(オラノ提供)

写真 GB II補助建屋を訪問した日本企業・団体一行(オラノ提供)

GB II補助建屋を訪問した日本企業・団体一行(オラノ提供)

(注1)オラノの前身は原子力大手アレバ。統合・再編などを経て、現在はウラン鉱石の採掘から核燃料サイクルまでを手掛ける。日本原燃の青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設に技術供与。

(注2)MOX燃料とは、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出しウランと混ぜ合わせて生成された混合酸化化合物(Mixed Oxide)。原子力発電の持続性向上のため、希少資源のリサイクル利用、放射性廃棄物の削減に大きく貢献。

(井上宏一)

(フランス)

ビジネス短信 aae5e19fee36c29e