製造業ライセンス、ローカル人材雇用比率条件に留意

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年06月24日

マレーシアでは、1975年工業調整法に基づき、250万リンギ(約7,750万円、1リンギ=約31円)以上の株主資本を有するか、75人以上の常勤従業員を雇用する製造業は、製造業ライセンス取得が義務付けられる(外資に関する規制参照)。ライセンスはいったん取得すれば、自ら操業停止するまで有効だ。事業単位の付与のため、新たに別事業を立ち上げる際にはライセンスの追加申請を要する。

マレーシア人雇用比率、2016年1月1日以降の投資かがポイント

製造業ライセンス申請にかかるMIDAガイドラインPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)付属書1によると、ライセンス供与要件の1つとして「フルタイムの常勤雇用者(注)の80%がマレーシア人であること(80-20ルール)」が課される。MIDAによると、同要件は、高付加価値型産業への移行に向けた研究開発への投資増や人材高度化を目的に、2016年1月1日に導入された。上記ガイドラインには「2022年12月31日までに申請された拡張・多角化事業では、マレーシア人雇用比率の要件が緩和される」との注釈がある。

ジェトロが6月上旬にMIDAに確認したところ、要件の詳細が以下のとおりわかった。

  1. 80-20ルールの対象は「新規企業(new companies):2016年1月1日以降に新規にマレーシアに進出し製造業ライセンスを取得した企業」「既存企業(existing companies):同日時点で既に製造業ライセンスを保持し、同日以降に新規事業(拡張、多角化など)に対する製造業ライセンスを新たに取得した企業」。
  2. 既存企業に80-20ルールを適用する場合、従業員比率の算出の際に母数とするのは、追加投資分の人員ではなく、当該企業の全従業員。
  3. 80-20ルールは過去にさかのぼっては適用されない。従って、2015年以前に製造業ライセンスを取得済みで、2016年以降に新規にライセンスを付与されていない企業はルールの対象外。
  4. 新規企業には80-20ルールが既に適用され、対象企業は順守済み。他方で、既存企業では、追加投資によって直ちにライセンスが停止される事態などを防ぐため、80-20ルール充足の猶予期間を設置。当初は2020年1月1日を期限としていたが、企業からの要請を受け2022年12月31日までこれを延期。

2023年1月以降の運用は現時点で不明

2023年1月1日時点で80-20ルールを充足しない企業への処遇については、現在MIDAや国際貿易産業(MITI)などが検討しているという。MIDAは産業界からの意見聴取のため、2022年2月~3月、新規企業と既存企業の双方にアンケート調査を実施。その結果も踏まえて結論を出す。MIDAとしては、製造業のニーズに合致した対応をしつつ、外国人労働力の削減に向けた自動化支援なども引き続き実施したいとしている。

現在定められている期限まで残り半年に迫る中、現場の実態に即した段階的な措置の導入が求められる。

(注)就労時間が1日6時間以上、かつ年間平均労働日数が月20日以上で、会社から給与を受け取っている全ての者。間接雇用(アウトソーシング、人材派遣、サプライヤー)は対象外で、会社による直接雇用者のみが計算対象。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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