カナダ政府、第2期「汎カナダAI戦略」発表、4億カナダ・ドル投じて実用化後押し

カナダ政府のイノベーション・科学・産業相のフランソワフィリップ・シャンパーニュ氏は6月22日、「汎（はん）カナダ人工知能（AI）戦略」の第2期の開始を発表した。2021年予算で確保した4億4,300万カナダ・ドル（約465億円、Cドル、1Cドル＝約105円）以上の投資を背景に、戦略の第2期は世界クラスの人材と最先端の研究能力を商業化に結び付け、カナダが有するアイデアと知識の国内での実用化を確実にすることを目指す。

今回の発表は、6月20～23日に開催された北米最大級のテックカンファレンス「コリジョン（Collision）」（2022年6月28日記事参照）の中で行われ、政府によるイノベーションの奨励と責任あるAI開発支援を行うための取り組みとして紹介された。

主なものとして、カナダ先端研究機構（CIFAR）へ1億6,000万Cドルを拠出して学術研究の優秀人材を誘致し、維持、開発する制度を継続するほか、「グローバル・イノベーション・クラスター」事業に1億2,500万Cドルを拠出し、国内の中小企業を支援する。加えて、他の公的および民間の資金源からの民間投資の呼び込みやメード・イン・カナダのAIソリューションの開発を通してAIの商業化を加速する。さらに、国内の3つの国立AI研究所に6,000万Cドルを拠出し、AI研究を実用化し、その技術を採用する企業の能力向上を支援する。

同戦略の第1期では、国立AI研究所における研究、イノベーション、トレーニングのセンター設立など、カナダの強力な人材パイプラインとエコシステムを構築することを目的として、2017年からCIFARなどを通じて実施していた（2018年6月11日付地域・分析レポート参照）。カナダ政府によると、2017年以降、AI研究者のCIFARでの採用は100人以上に上るほか、国立AI研究所では1,500人以上の大学院生やポスドクの育成が進んでいる。その多くは、各研究所それぞれの強みが評価されて海外からカナダにやってきた研究者や留学生だという。

シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相は会見の中で「汎カナダAI戦略の第2期は、AIの潜在能力をフルに活用して国民に利益をもたらし、信頼できる技術開発を加速させるとともに、AI領域全体の多様性と協力を促進するものだ。この協力的な取り組みにより、カナダを人工知能と機械学習の世界的リーダーとして確固たるものにするために必要な知識と専門性を結集することができる」とコメントした。

（飯田洋子）