2023年予算編成、新型コロナ禍からの回復と社会経済の強靭化目指す

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年06月14日

マレーシア財務省は6月3日、2023年国家予算編成前声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発出した。予算編成のテーマは、社会経済の強靭(きょうじん)化に向けた回復加速と改革推進で、重点3要素として以下を掲げた。

  1. 景気回復のモメンタム持続:経済成長率の改善のみならず、マレーシア国民や産業界の雇用と所得の回復を目指す。ビジネス面では、特に観光業や新型コロナウイルス感染による影響を強く受けたセクターの回復に焦点。
  2. 経済の強靭化:将来的なショックに備え、特に社会的弱者に向けた社会的保護、公衆衛生システムの改善、持続可能な財政状況の達成、的をより絞った補助金や政府支援の提供に向けた改革を行う。ビジネス面では中小企業の競争力強化や、デジタル化などを通じた生産性向上、経済面では地域間格差の是正に注力する。
  3. 包括的な改革:国際競争力を高め、持続可能な開発目標を推進するための経済社会改革を実施する。ビジネス面では、新たな成長分野の活性化と高付加価値産業への移行、経済面では脱炭素と持続可能な開発の推進に焦点。

これら重点要素を掲げるに際しては、世界経済の回復、地政学的緊張から生じる下振れリスクの適切な管理、インフレ圧力の抑制、経済成長と財政健全化とのバランス維持を前提として置いている。

財務省は専用サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて、約400の関係機関から予算案に関する意見や提案を聴取している。マレーシアのシンクタンク、民主主義経済問題研究所(IDEAS)は6月10日、財政の透明性とガバナンスを実現する上で、財務省が予算編成前声明を出したことを評価。一方で、声明内容に関しては、石油や食用油向けの補助金だけでも相当額に膨らむ見通しを受け、より予測可能で管理が容易な方法で補助金を支出すべきだと表明。さらには、財務省が税源浸食と利益移転(BEPS)勧告に準拠する上で、従来以上に非財政的インセンティブに目を向け租税戦略を打ち立てるべきだと注文した。具体的には、国内人材プールの充実や環境・社会・ガバナンス(ESG)推進に向けた取り組みなどが重要だと指摘した。意見聴取は6月24日まで受け付け、2023年国家予算案は10月28日に発表される予定。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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