工業団地公団、南部工業団地への投資呼びかけ
(タイ)
バンコク発
2022年06月15日
ジェトロは5月18日、タイ南部ソンクラー県でタイ工業団地公団(IEAT)が運営する南部工業団地を視察した。同工業団地はタイ・マレーシア国境(タイ側:サダオ)から約2キロ、同県のハジャイ国際空港から約57キロに位置する。一般的に、タイ南部は観光地として人気で、シンガポールやマレーシアからの観光客が多い地域だが、ヤシや木材などの原材料が豊富という特色もある。また、サダオ国境はタイ国内で最も交通量が多い国境の1つで、物流の要衝という側面がある。
同工業団地の面積は約929ライ(1ライ=約1,600平方メートル)で、一般産業用区画が629ライ、物流用区画が300ライ。全区画のうち約8割は既に契約・売約済みで、現在108ライの区画が入居可能だという。入居予定企業の国籍はマレーシア、ミャンマーなどで、業種は物流関連が多いが、軽工業や食品からの引き合いも増えている。これから工場などの建設が開始されるほか、大型冷凍庫などの建設も予定する。
同工業団地の強みはフリーゾーン(保税倉庫、写真参照)を有することで、例えば、マレーシアから貨物を輸入する場合、タイ側の保税倉庫に入庫すれば、タイの税関職員が出向いて、その場で通関手続きを行うことができる。国境付近の渋滞緩和にもつながる。
また、タイ投資委員会(BOI)が認める恩典として、(1)8年間の法人税免除、(2)その後、最大5年間の法人税減免、(3)水道・電気料金の2倍の費用控除、(4)設備投資コストの25%を費用控除などがある。
入居時の手続きについては、ワンストップサービスの利用も可能だ。また、電気や水、通信設備をはじめ、排水処理施設も自前で賄っており、水のリサイクルにも取り組んでいる。南部は降雨が激しい地域だが、同工業団地には洪水防止設備があるため、洪水の心配はないという。水の供給も十分整っている。さらに、同工業団地は教育機関と連携した人材育成にも力を入れており、地元大学や専門学校と人材育成に関する覚書(MOU)を結ぶなどしている。
同工業団地は国境に近いという立地の優位性から、タイ南部の物流拠点として有望だ。現在、同工業団地から外国への物流ルートの1つとして隣国マレーシアのペナン港を経由して欧州に貨物を輸出するルートがある。国内を結ぶ物流ルートについては、運輸省によると、同工業団地とハジャイ市内から北へ14キロに位置するタイ国鉄のバングラム駅が道路でつながる計画があり(注)、鉄道へのアクセスが改善することで、東部経済回廊(EEC)エリアへの輸送も容易となる見込みだ。「日系企業からの問い合わせは今はほとんどないが、ぜひ投資を検討して欲しい」と担当者は期待を述べた。
建設中の保税倉庫(ジェトロ撮影)
(注)南部工業団地、バングラム駅に加え、同工業団地から63キロ北に位置し、同じくIEATが運営するラバーシティー工業団地も道路でつながる計画となっている。
(岡本泰、ナオルンロート・ジラッパパー)
(タイ)
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