人手不足解消にサバ州とサラワク州の余剰人材活用も

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年06月23日

マレーシアでは、新型コロナウイルス感染のエンデミック(一定期間で繰り返される流行)への移行期に入って経済が回復に向かう中、労働人材の逼迫がますます顕在化してきた。日系企業がマレーシアの労働政策や雇用環境に関して抱える問題点として、賃金上昇や従業員の定着率に加え、人手不足を上位に挙げている(2022年度JACTIM・JETRO共同日系企業アンケート調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。その背景として、E-ヘイリング(配車サービス)市場やギグエコノミー業界への労働人口移動、3D(汚い、難しい、危険)業種の忌避、外国人労働力の不足などの要因がある。特に外国人労働者について、政府は、2020年6月から凍結していた新規採用を2022年1月以降段階的に再開した(2022年3月7日記事参照)。しかし、申請後の手続きが停滞していることから実際に採用に至るケースはまれで、依然として人手が足りないのが実態だ。

景気回復に伴う需要増も相まって労働力不足に拍車がかかる中、東マレーシア(サバ州、サラワク州)の人材雇用が人手不足を解消する可能性がある。6月14日にマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)が社会保障機構(SOCSO)に聞いたところ、両州の余剰人材が豊富なことが明らかとなった。マレーシア国民であるため当然、半島マレーシアでの就職も問題なく可能だ。

サバ州とサラワク州のSOCSO担当者によると、両州合わせてSOCSOを通じた求職が約14万人あるのに対して求人は約2万人と、前者が後者を大きく上回る。さらに、サバ州では求職者のうち約40%、サラワク州では約45%が高等教育を修了した者であることも明らかとなった。SOCSOは、東マレーシアから人を採用するに当たり、求人企業は政府の求人ポータルサイト「マイフューチャージョブス(MyFUturejobs)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に登録の上、求職者とのマッチングを活用してほしいと呼びかけた。なお、6月30日までに同サイトに求人を投稿すれば、2022年国家予算に基づくインセンティブ(注)が適用される〔財務省Jamin Kerja(雇用保障)プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。サバ州とサラワク州に特有の優遇措置はない。また、外国人労働者ではないため、待遇は半島マレーシアと同等水準が望ましいとも説明した。

(注)従業員の新規採用に対し、政府が最大12カ月間補助金を支給するもの。雇用後最初の6カ月間は給与の20~30%、7カ月目以降は30~40%を補助する。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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